南島漂流記
2004年3月後
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2004.3.31

 今日は心地よい陽射しが降り注いでいます。長袖と半袖の過渡期のような陽気の中、目に付くようになってきたのがノアサガオの花。冬にも見られますが、やはりこれくらいの気候のほうがのびのびと咲いているように映ります。
 ノアサガオは、沖縄では何処でも普通に繁茂していますが、それ以外では紀伊半島、四国、九州の南岸地域に限られるようです。アサガオという名前が付いていますが、夕方まで花が開いています。ただ、花の色が午前中は青く次第に赤紫色に変化していくのはアサガオと同じです。
 アサガオの仲間には、ヒルガオ、ヨルガオもありますが、どれもヒルガオ科の植物です。開花する時間帯によって分けられているようですが、ノアサガオはほとんどの時間帯にまたがって花が見られるようです。さらによく似たネーミングにユウガオもありますが、これはウリ科の植物で干瓢(かんぴょう)の原料ですね。


ノアサガオの花
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED PL-Filter


ヨウテイボクの花
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight
2004.3.30

 朝方は薄日も覗いていましたが、昼前からまた雨が落ち始めました。どうもはっきりしない天気が続いていますが、沖縄でも菜種梅雨という表現はあるのでしょうか?10年振りの夜間断水は当面延期になりましたが、どうせ降るのなら、亜熱帯の梅雨らしくもっとメリハリ付けて降ってくれないものかと思ってしまいます。つまり、思いきって降るか晴れるかのどちらかにして欲しいと・・・
 昨日は、久しぶりに陽が射していましたが、生憎の仕事が重なり、フィールドには出られませんでした。しかし、人間というものは、そのような日のことは余り記憶に残らず、天気が悪い日のことばかり記憶に蓄積していくものなのかもしれません。
 雨に濡れている花でちょっと印象に残ったのが、このヨウテイボク、あるいはオオバナソシンカとも呼ばれます。強い陽射しの下、強いコントラストの光で見るよりも、この花の色が心地よく伝わってくるような気がします。

2004.3.28

 山原(やんばる=沖縄本島北部)に生息する天然記念物16種に名を列ねるイボイモリ。扱いは沖縄県指定ですが、種としての歴史の古さはトップクラスです。何しろ、数千万年前の地層から余り変わらない姿で化石が出るのだそうですから。所謂、「生きる化石」という存在です。
 この手の生き物が苦手な方には、グロテスクこの上ない姿かと思いますが、この姿のまま数千万年もの時間を生き抜いてきたのかと思うと、ちょっと感慨を覚えます。そのグロテスクの最大の原因とも思われる胴体に見えるイボ。これは、肋骨などの骨格による突起なのです。
 さて、このイボイモリ、ほとんど夜行性で昼間は石の下などに潜っているのですが、今日はどういう訳か昼間に遭遇しました。曇天とはいえ、珍しいことです。単なる気紛れで、何か異常な行動でなければよいのですが。それにしても、最近はイボイモリの数が減ってしまいました。山原の天然記念物動物の中での種としての古さもトップクラスですが、近年の生息数の減少のスピードもトップクラスです。数千万年も通用してきた姿が、適応出来ないほどの近年の山原の環境の変貌ぶりなのでしょうか?


イボイモリ
NikonD1X Nikkor10.5/2.8 Fisheye speedlight


ビロードツリアブを捕らえたオキナワアズチグモ
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight
2004.3.28

 そのもうひとつ撮影したかったのが、このシーンです。春先だけに出現する、金色の毛に覆われたビロードツリアブ。いつもは忙しくなく飛び回って、なかなか落ち着いて撮影させてくれないのですが、珍しく近付いても逃げないで、センダングサの花でじっとしています。「これはちょっと普通の状態ではないな」と覗き込んでみると、「やはり!」オキナワアズチグモに捕食されていました。
 オキナワアズチグモは保護色を活かして、ときにアゲハチョウのような自分の体よりもはるかに大きな獲物をしとめます。一方、ビロードツリアブは、花から花へと飛び回りますから、格好の獲物に違いありません。もっとも、ビロードツリアブのほうも、細長い脚先だけで花に触れ、長い口吻で吸蜜するタイプなので、そう簡単に捕食されはしないようなのですが。
 この珍しいシーンに遭遇出来た幸運を噛み締めながらじっくり撮影したかったのですが、急に暗くなって雨が降り出し、風もなかなか収まってくれず、絶好の撮影条件という訳にはいきませんでした。贅沢を言えば、春らしいうららかな明るい背景でお見せしたかったのですが・・・

2004.3.28

 ここ1週間、はっきりしない天気が続いて、新緑の季節を迎えている山原(やんばる=沖縄本島北部)の撮影がなかなか実現出来ないでいました。今朝は目を覚ましてみると、心地よい陽が射しています。快晴というわけではありませんが、今日の天気はなんとか持ちそうな気がして、朝から山原に出掛けました。
 新緑の日曜日ということもあり、あまり人の訪れない、それでいて春の昆虫たちの豊富な、とても短い林道に狙いを絞りました。その狙いが効を奏し、オオシマカクムネベニボタル、アマミアオハムシダマシ、チュウジョウコメツキモドキ、リュウキュウウラボシシジミなど、次々と春らしい被写体が現れます。
 そして、その林道の一番奥までやって来たときに、このオオシマオオトラフコガネの黒色型を見つけました。昨年の3月30日にも紹介したように、この黒色型というのは、数100匹に1匹程度の割合でしか出現しないとても珍しい存在です。昨年撮影したのも、今回とほぼ同じ場所です。この林道では、10年近く前、数時間内に黒色型を連続して3匹目撃したこともあり、どうやら黒色型遺伝子の穴場(?)のようです。昨年は、初めてビデオ撮影に成功したのですが、スチル写真は撮れませんでした。今年は、どちらでも撮影することが出来たのですが、ちょうどレンズを向けた頃から雨が降り始め、あまり好条件での撮影とはいきませんでした。もうひとつ、すぐ近くで撮影したいものもあったのですが・・・


オオシマオオトラフコガネ黒色型
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight


モクマオウの花
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight
2004.3.27

 今日は小雨どころか本降りの一日となりました。北部の水源地にもまとまった雨が降り、明後日から予定されている給水制限が回避されるとよいのですが。
 結構な雨ですが、季節はやはり春、あちらこちらに春を彷佛させる光景が見られます。芽吹きや花など、春を迎えた活き活きとした植物たちの姿が目に付くのですが、中には地味な春も混ざっています。
 針葉樹の花もそのひとつでしょう。既に21日にリュウキュウマツを紹介しましたが、他にも、コノデガシワやモクマオウなど、針葉樹に縁の薄い亜熱帯でも、花期を迎えています。
 針葉樹の花と言えば、本土では、そろそろ花粉症の元凶であるスギの花の季節かと思います。沖縄でも数十年前にはスギの植林が行われた時代がありました。しかし、亜熱帯気候の下では、充分に生育出来ず、花も咲かないのです。これは、自然生態系にとっても人間生活にとっても、却って幸いなことだったと思います。
 さて、このモクマオウ、沖縄では防風林にも用いられ、お馴染みの存在です。ちょうど今、葉先には褐色の花が見られます。一年中、濃い緑色の葉を着けているだけですが、今はその葉の補色に近い色の花に覆われているので、結構コントラストがあります。でも、この地味なものが、花と気付く方も少ないかもしれませんね。
 資料を見ていたら、小笠原では植林されたモクマオウが、花粉症の原因になっているという記述がありました。何故、小笠原だけなのか解りませんが、沖縄でもしそのようになったら大変なことです。何しろ、何処にでもある木ですから。

2004.3.26

 今日は小雨のパラつく一日となりました。新緑の山原(やんばる=沖縄本島北部)の撮影はなかなか実現出来ません。そろそろ、来週分のTVの素材の仕入れもしないとならないのですが、週間天気予報は、傘と雲マークばかり・・・
 そこで、今日も事務所裏での撮影です。今年は遅い遅いと言っていたカンヒザクラも何時の間にか、実が色付き始めています。まだまだ緑の実のほうが多く、赤い実はわずかですが、その中間のバリエーションがいろいろ並んでいて、そのグラデーションを楽しむのも悪くありません。このサクランボはアメリカンチェリーのように黒っぽくなって、やっと甘味が渋みに勝る状態になりますから、口でも楽しめるのはもう少し先のことのようです。
 花や実に目がいきがちですが、今の季節は柔らかな若葉もなかなか魅力的な質感です。「葉桜」という言葉がわざわざあるように、やはり古から桜の若葉の美しさは認識されていたのでしょう。それにしてもその葉桜を際立たせてくれるようなお日様は何処にいってしまったのでしょうか?あるいは、水不足解消のために北部の水源地に思いっきり降ってくれるか、どちらかにして欲しいものです。


色付き始めたカンヒザクラの実
NikonD1X Sigma APO180/3.5 Macro Speedlight


吸汁するタイワントゲカメムシ
NikonD1X Sigma APO180/3.5 Macro Speedlight
2004.3.25

 朝のうちは陽射しも覗き、今日は期待が持てるかとしれないと撮影の準備をしていたところ、昼前から厚い雲が広がってしまいました・・・
 ところで、撮影準備中に急に使ってみたくなったレンズがありました。180mmのマクロレンズなのですが、そう言えばデジタルボディとは余り組み合わせて使ったことがありません。デジタルボディだと、270mm換算で最大撮影倍率は1.5倍と、なかなか魅力的なスペックです。そこで、事務所裏の植え込みで被写体を探してみました。
 天気はどんよりしていますが、気温は高めで、意外に多くの昆虫が活動しています。まず、目に付いたのがタイワントゲカメムシ。真冬でも見かける種ですが、今日はいろいろな植物で活動しています。中でも、このオニタビラコの若い実から吸汁している姿が、活き活き感じられました。
 それからも、キベリヒゲナガサシガメ、アカスジカメムシなど、鮮やかでより魅力的なカメムシに出会い、シャッターを押したのですが、結果的にこの色彩的には最も地味なタイワントゲカメムシの映像に好感が持てました。

2004.3.24

 山原(やんばる=沖縄本島北部)の森は、新緑に輝く一年で最も美しい季節を迎えています。天気のよい日を選んで、その光景を存分に撮影したいのですが、なかなか好天に恵まれません。出来れば、電気工事などに使うバケット車をレンタルして、ビデオのクレーン撮影をしたいのですが、その費用を考えると、確実に好天の日を選ばなければなりません。
 その日の雲行きと週間天気予報を睨む毎日なのですが、なかなか思うようにいきません。厚い雲に覆われた空は、毎日の撮影対象にも影響を与えます。以前にも書きましたが、好天の日には亜熱帯らしい鮮やかな被写体に目が行きますが、曇天の日はどうしても地味な被写体にレンズを向ける傾向があります。そのような中で、曇りの日でも鮮やかで、目に訴える植物の存在が気になっていました。
 それが、このノウゼンハレンの花。キンレンカ、ナスタチウムの名でも知られ、山吹色の花もあります。この朱色の花は、曇天のコントラストの低い光線状態でも、何故か鮮やかな色彩を放ち、目に染みるように感じるのです。庭先によく植えられていることもあって、前々から気になっていたのですが、レンズを向けたのは今日が初めてです。遠くから見るとなかなか魅力的な存在だったのですが、近寄ってシャッターを切ろうとすると、意外にも萎れた花が多く、画面全体を新鮮な花だけで構成するのは難しいことでした。


ノウゼンハレン
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6


モモタマナの芽吹き
NikonD70 Sigma18-50/3.5-5.6 Speedlight
2004.3.23

 いろいろな樹木の芽吹きラッシュですが、今日はこのモモタマナ。あるいは、コバテイシと呼ばれることもあります。枝が横方向が伸び、大きな葉を広げるので、影を作り易く、沖縄では盛んに植栽されています。
 3日前に紹介したハゼノキもそうですが、若葉と花芽と同時に紅葉した葉と実も見られます。すべての要素が同時に見られるのも面白い現象ですが、このモモタマナが一番美しく感じられるのは、この若葉が完全に開ききったときです。その頃には、ちょうど春先の陽光が、葉いっぱいに注ぎ、とても春らしい光景となります。
 さて、今日は久しぶりに新型のD70による撮影です。そろそろ、この南島漂流記の中でのレポートも終りにしようかと思いますが、現時点での評価をまとめておきましょう。
 D70を単独で使用するには、小型軽量、高機能、安価で高いコストパフォーマンスを発揮します。しかし、D1Xなど他機種のサブボディとして併用する場合は、ストロボ、アングルファインダー、バッテリ&チャージャを別個に用意しなければならず、あまり効率的とは言えません。ましてや、持ち歩ける機材に制限のあるフィールドワークの中では現実的な組み合わせと言えません。早く、真のD1Xのサブボディとなるような機種の発売を実現して欲しいところです。
 一方、内蔵ストロボでも、105mmマクロレンズの最短撮影距離まで、画面全体ムラなく照明されます。もっとも、レンズから離れた位置にある小さな発光部ですから、影の出方などには目を瞑るしかないでしょうが・・・
 結論として、ボディ1台、レンズ1本だけで気軽に撮影するような状況では極めて有用な存在だと思います。
ニコンD70の使用レポートを、「資料室」>「こだわりの道具箱」にまとめてみました。

2004.3.21

 山原(やんばる=沖縄本島北部)の森では、いろいろな花を楽しむことの出来る季節です。ついつい、鮮やかな花に目を奪われがちですが、亜熱帯には少ない針葉樹にも花が見られます。例えば、このリュウキュウマツ。
 雄花はよく目立ちますが、小振りな雌花はなかなか気付きません。しかし、その色はなかなか鮮やかで、背景の葉の緑とのコントラストが印象的です。しかし、既に雄花は終わったようですから、これは花ではなく若い実の段階なのでしょうか。
 ところで、この写真、NikonD70と同D1Xの画質比較のために撮影したのですが、同一の設定にしたつもりなのに、露出決定のアルゴリズムが異なるためか、出来上がった映像はかなり違う印象です。最も異なる点は、自然光とストロボ光のバランスです。D70のほうがストロボ光が強く、D1Xのほうが自然光重視といったところです。結局、これでは比較テストにはならず、より自然な感じのD1Xの映像だけをアップしました。


リュウキュウマツの雌花?
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight


アオバナハイノキ
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED X1.4Telecon PL-Filter Speedlight
2004.3.21

 昨日は雲が厚く余り撮影日和ではなかったのですが、今日は昼間だけは晴れ間が覗く予報。朝早くから山原(やんばる=沖縄本島北部)に出掛けました。狙いは、アオバナハイノキの花。今月16日に紹介したクロバイの同属近縁種で、和名のとおり青紫色の花を着けます。満開になると、木全体がこの色に覆われ、黄緑、黄色、白などに構成されている新緑の山並の中で、一際華やいだ存在となります。
 ところが、先に触れたように、この美しさが仇となり、林道沿いの木はほとんど持ち去られて、最近では幻の木になりつつあります。残っているのは、なかなか近付けない険しい斜面のような環境ばかりです。従って、林道からは遠い木が多く、よい条件で撮影することは、年々難しくなりつつあります。
 今日も林道の左右を注意しながらゆっくりと車を走らせるのですが、なかなか思ったような木はありません。最も多くの花を着けていた木は、沢を挟んだ対岸の斜面で距離は30m程もあります。木全体は撮影出来ても、花のアップはとても無理です。
 午後には用事があるので、帰路に着いた直後、なんとなく予感がして林道沿いの法面の上にある広場に上ってみました。すると、その広場の隅に小さなアオバナハイノキがあり、ほんの一枝だけ花を着けているではありませんか!超望遠レンズで近寄れば、ひとつひとつの花の構造が判る程度の大きさには撮影出来そうです。こうして、何とか撮影出来たのが、この写真というわけです。
 今日も、新型Nikon D70のテストを兼ねての山原だったのですが、システムが未完成なこともあって、ここ一番というときは、どうしてもこれまでのD1Xに頼ってしまう結果となりました。

2004.3.20

 沖縄本島中部、事務所の周辺のハゼノキが、芽吹きの季節を迎えています。新しい葉と花芽が一斉に伸び始め、春らしさを感じさせてくれます。一方で、同時に紅葉した葉も、まだまだ枝にしがみ付いています。さらに、よく探せば、ところどころに昨夏に実を着けていた名残りの柄も残っています。いろいろなシーズンの痕跡が同居している状態ですが、これはもしかすると亜熱帯に分布するハゼノキ特有の姿なのかもしれません。
 温帯に生育するハゼノキは、やはり秋に紅葉し、冬には完全に葉を落とし、春の芽吹きの時まで、その葉を残しているとは考えられませんから。このような現象は、他の樹木でも広く見られることなのかもしれません。例えば、イイギリ。春先まで赤い実を残しながら、既に芽吹きが始まっているという光景を目にしています。熱帯にまで共通して見られる樹種は、そこでさらに違いを見せているのでしょうか?
 さて、今日は生憎の天気でもあり、新型カメラのNikon D70のテストはほとんどしませんでした。しかし、あれこれと触っているうちに、D1Xのサブボディ、あるいは代わりに使うには、いろいろと問題点が出て来ました。その最たるものが、一昨日の繰り返しになりますが、ストロボの問題です。昆虫など小さな被写体の撮影が多いため、ストロボは頻繁に使用するアクセサリーです。これまでも、SB-50DXという小型ストロボにちょっとした工作をして、マクロレンズの先端に固定できるようにして使ってきました。この際、面倒な露出計算の要らないTTL調光で使用する場合がほとんどです。ところが、このストロボは、新型のD70ではTTL調光出来ないのです。これに代わる新型の小型ストロボの発売予定は、まだ先の6月。そんな高度のTTL調光機能は要りませんから、せめて簡易TTL調光でも出来れば、即戦力なのに・・・と惜しまれます。


ハゼノキの芽吹き
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6


ルリハコベ
NikonD70 Sigma105/2.8 Macro PL-Filter
2004.3.19

 今日は、ニコンD70の初テスト。いろいろな条件でD1Xと比較テストを試みたいところですが、生憎今日は充分な時間がとれません。そこで、一昨日撮影したルリハコベの花をもう一度狙ってみました。影像による比較というよりも、まずは操作感覚の確認といったところです。
 昨日触れたファインダの見え具合は、明るい条件ですと、それ程不満は感じられません。暗いときなど、悪条件下だけの弱点なのかもしれません。シャッターの感触は、なかなかソフトでD1Xのようにかん高い音質ではありません。その代わりに、ややタイムラグが長く感じられます。フォーカスの速度も、D1Xに比べると、少しモタついたような一瞬が感じられることもあります。
 あと、実際に困ったわけでではありませんが、撮影していて、「アンングルファインダーが取り付けられない」「シンクロターミナルがない」「リモートターミナルがない」などに気付きました。なるほど、こういう点が普及機なのだと変に納得した次第です。きっと、D1Xのサブボディとして使っていくと、このような点や、バッテリー及びチャージャーが共通でないところがネックになるのだろうなと思いました。
 ところで、一昨日に続いて、ルリハコベを撮影していて思いました。なかなか群落の一部を切り撮るというのは難しいことです。「うわ〜、いっぱいある!」という見た目の豪華さに興奮して、なかなかまとまりある構図が見えてこないのです。これは、動き回る動物も然り。あれこれと的を絞り切れずに、右往左往しているうちに、全部逃げていたってことも一度や二度ではありませんから。

2004.3.18

 ニコンの新型レンズ交換式デジタル一眼レフD70がやってきました。まず、手にしてみての第一印象は、「軽い!小さい!」です。現在使用しているD1Xが1100gなのに対して、595gと半分近い重さ(軽さ?)なのですから、なおさら感じるのでしょう。
 これまで、サイズ&重量的、価格的な理由から、デジタルのサブボディはなかなか持てなかったのですが、これならば実行可能でしょう。価格も定価¥150,000実売11万円台という信じられない設定です。ニコンのデジタル一眼レフは、D1で100万円を切り、D100で30万円を切り、そしてこのD70で限り無く10万円に近付き、話題にもなってきましたが、いよいよフィルムカメラと価格的にも対抗しうるところまでやって来たことに、時代を感じます。
 評価すべきところは、サイズと価格だけではありません。スペックを見ても、ほとんどフル機能、シャッターも最高1/8000秒、ストロボ同調1/5000秒という高機能です。決して、普及機だからといって、わざとスペックダウンして上位機種との差別化を計ったりしていないところに好感が持てます。これは、現時点での唯一のライバル機キヤノンイオスキスデジタルと大きく異なる点でしょう。それだけ、ニコンがこの小さなD70に込めている思い入れの大きさが感じられます。
 現行のニコンデジタル一眼レフのラインナップの中で、対極にある最上位機種D1Xと比較するのは酷というものですが、スペック差はそれ程大きく感じられません。逆に、ストロボが内蔵されているアドバンテージさえあります。しかし、実際に操作してみると、スペックに表れない部分にその差が感じられます。まず、ファインダーの見え具合。ペンタプリズムではなくミラーを採用したためか、暗くクリア感がありません。また、フォーカスエリアの表示も、LEDの赤い照明の影響がファインダの広い範囲に出てしまうのも高級感を欠きます。そして、各ダイアルやボタンの操作感も、やはり軽い感じがします。しかし、定価で4倍程も異なるボディの最大の違いがこの操作感だとしたら、D70のコストパフォーマンスの高さは驚異的と言えるでしょう。
 最大の難点は、このボディの機能と言うよりも、メーカーの開発思想的な部分なのですが、外付けストロボのTTL調光規格がまた変更になったことです。便利な新機能が採用されるのは結構なのですが、これまでのストロボでは、TTL調光さえ出来ないのです。これは、デジタルボディが出たときに、これまでのフィルムカメラ用ストロボではTTL調光出来なかったのに続く、ユーザーサイドの損失です。しかも、新しい小型の外付けストロボの発売予定は6月というのも頂けません。
 最後はメーカー批判になってしまいましたが、そのような部分に目を瞑っても、余りある魅力に包まれた新機種です。明日のテスト撮影の結果が、今から楽しみです。


NikonD70&D1X
Canon Powershot G2


ルリハコベの花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter
2004.3.17

 先週末の山原(やんばる=沖縄本島北部)では、全く天気に恵まれませんでしたが、帰ってきた翌日から晴天続きです。全く皮肉なものです。
 今日の散歩では、道端にルリハコベの小さな群落を見つけました。ですが、こういう撮影のときは薄曇りくらいがちょうどいいのになぁと思っていたところ、巧い具合に雲がかかってくれました。陽が陰ると、花のルリ色が目に染みるようです。
 園芸種の華やかさも嫌いではありませんが、草むらや道端に何気なく生えている、このような植物にも気を引かれます。しかし、このような花には、往々にして皮肉な名前の付いていることがあります。オオイヌノフグリ、コメツブウマゴヤシなどなど・・・それに対して、このルリハコベの命名は、ストレートにその姿を表していて、好感がもてます。 

2004.3.16

 新緑に輝く山原(やんばる=沖縄本島北部)の森。スダジイ、オキナワウラジロガシやタブノキなどが優占樹種の森の山並は、明るい黄色から深い緑までのグラデーションに覆われています。そのような森の樹冠部に、一際明るい色の塊が混ざって見えます。これが、その白い塊の正体、クロバイの花です。こんな純白の花に、「黒」という命名されているのが、ちょっと不思議な気がします。
 台風の度重なる襲来を受ける沖縄では、森の樹々は20m前後にまでしか生長しません。そのような樹冠部で花を着ける植物はそう多くありません。遠くから見ると白い塊にしか見えませんが、近くで見ると、小さな花が集合した房状の花であるのが判ります。イメージ的には、何処か北国に相応しいく、亜熱帯の森にはちょっとミスマッチな感じもします。ただ、このようにディテールが見えるような環境で、開花している木は稀にしかありません。
 このクロバイは、ハイノキ科の植物ですが、この時期やはり山原の森で目立っている花木があります。アオバナハイノキという同じくハイノキ科の種で、和名のとおり薄紫色の花を着けます。黄色い雄しべとのコントラストが美しく、なかなか人気の高い樹種です。このアオバナハイノキは、クロバイにように大きく生長せずに低い枝に花を着けます。そのために、園芸愛好家や業者に持ち去られ、道路沿いで咲き誇るアオバナハイノキを撮影出来るポイントはほとんどなくなってしまいました。


クロバイの花
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED

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