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11 NOV.2001 / Canon PowerShot G2
PowerShot G2本体使用システム
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今秋発売の400万画素デジタルカメラの中でも、画質のよさでダントツの評価を受けているG2。メーカーカタログ用のカット撮影を担当し、そのときから絵の美しさには気付いていたが、実際に各社の製品が発売された後、改めてその性能に驚いた。

解像度はなかなかもので、Photoshopで少しシャープネスを高めに設定してやれば、A1サイズ(594X841mm)にプリントアウトしても観賞に耐えられるクオリティだ。色の再現性もかなりのレベル。これまではデジカメ画像をパソコンに取り込むと、その色調補正に何ステップも要することが多かったが、ほとんどの条件において無補正でとてもナチュラルで美しい画像が得られる。

仕事に必須のクローズアップ性能も、本体機能だけでかなりの状況に対応可能だ。さらにクローズアップレンズとEOSシリーズ用マクロリングライトを組み合わせると、もうほとんど一眼レフ並みの撮影ができる。マニュアルフォーカスに切り替えると、画面の中央部分だけが拡大表示され、このジャンルの機種の中では結構使いやすいものになっている。このあたりは、スタイルは銀塩(フィルム)コンパクトカメラだが、液晶ファインダを備えたデジカメは、ほとんど一眼レフ並みの機能を発揮するのだから、驚異的だ。

欠点は、カメラをフォールディングすると、本体背面の「MENUボタン」に右手親指が掛かってしまい、撮影しようとするとファインダにメニュー画面が表示されていることが度々あった。そして、これだけの機能を持っているのだから、もっとマニアックなデザインにして存在感をアピールすれば、さらに魅力的なカメラになる可能性があるのにちょっと惜しい。

当サイトの各種のアイテム紹介や「南島漂流記」の写真のほとんどは、このカメラで撮影している。

写真右:マクロリングライトMRー14EXを装着したG2本体、スピードライト420EX、ワイドコンバーター(X0.8)、テレコンバーター(X1.5)、クローズアップレンズ250D、ワイヤレスコントローラー、CFカード、バッテリパック、バッテリーチャージャーのシステム一式。

15 DEC. 2001/Nikon FM3A
FM3AFE2

左よりNewFM2/FM3A/FE2
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発売以来、気になっていたNikon FM3Aをついに購入した。これまで、昆虫の撮影にはNikon FE2をメインに使用してきたのだが、メーカーによるメンテナンスが終了してしまい、途方に暮れていた。実によく出来たカメラなのだが、シャッター系の耐久性にやや難があり、定期的にメンテナンスが必要とされるからだ。これまで、3台のブラックボディを使い回してきたが、そのうちの1台がややヘタリ気味だったので、思いきってFM3Aと交代させることにした。

Nikon FE2は1984年の発売と同時に購入し、その後製造中止になってからも、中古で2台を買い増して、使用してきた。これまでで最も思い入れの深い仕事用カメラボディかもしれない。その魅力は、必要充分な機能のみを備えていて、余計なお節介機能が一切ないこと。露出モードは、絞り優先オートとマニュアルのみ。測光モードも中央部重点測光のみで、マルチパターン測光もない。フォーカスはもちろんマニュアル。フィルム巻き上げもオプションのモータードライブは装着可能だが、手動巻き上げが基本だ。こうして改めて機能を列挙してみると、現在のオートフォーカス一眼レフカメラに対して、なんとも貧弱な前近代的な存在のようだが、ストロボを多用する昆虫のクローズアップ撮影にはこれで充分な機能と言える。なにしろコンパクトで軽いのがいい。ストロボのチャージサイクルを考えると、手動巻き上げのほうがリズム的に合っているように思う。そして今では当たり前だが、250分の1秒ストロボシンクロが、最大の特徴である。発売当時、35mmフルサイズフォーカルプレーンシャッターでは、この機種が世界初のものだった。それまで、撮影した写真の質は、そのほとんどがレンズ性能に依存しているのだから、ボディよりもレンズに予算をかけるのが本道だと思っていた。カメラの機能差は、撮影者が楽出来るか、あるいはやや歩留まりが上がる程度のものだと考えていた。しかし、この250分の1秒シンクロで撮影した写真の質は、明らかに異なる。例えば、明るい空をバックに飛んでいるチョウをデイライトシンクロ撮影すると、それまでの60分の1秒や125分の1秒では、はねがブレて綺麗には写らなかった。しかし、この250分の1秒でシンクロ撮影すれば、かなりの確率ではねの動きが止まり、美しい影像となるのだ。このような意義のあるカメラが発売されるのだから、何としても買うべきだと思った。発売当時、大学院生で決して経済的余裕はなかったが、なんとか発売と同時に購入したのを覚えている。

しかし、FE2の製造期間はそれほど長くはなかった。後を追うように発売されたマルチパターン測光やマルチモード露出搭載のFAの影響もあったのだろうが、FE2の人気が高くなったのは、むしろ製造中止後のことだと記憶している。その後も、New FM2は最近まで継続生産されていたが、メーカー関係者のコメントで、「FE2とFM2のどちらを残してもよかった。何れにせよ、このようなマニュアルカメラの生産技術を残すことが目的だった」という主旨を聞いたことがある。ならば、絞り優先オートと追針式露出計というFM2以上の機能を有するFE2を残して欲しかったものだと強く感じた。その後、私の夢の理想カメラは、500分の1秒シンクロ可能なNikon FE3となった。

そして、今回のFM3Aの発売である。ネーミングは、New FM2の後継機種であることを意識したものだが、この機能はどう考えてもFE2の後継機種と考えられるもので、むしろFE3Mとしたほうが正当に思われる。ほとんどFE2の機能をそのまま継承している上、全速機械式を併用したハイブリッドシャッター採用は、離島や奥地などでの撮影でも心強い。夢の500分の1秒シンクロこそ実現されなかったが、余計なお節介機能が一切追加されなかったのが、一番の喜びとも言える。
Nikon S3の復刻にも驚かされたが、オートフォーカス機全盛の今の世に、Nikon FE3とも言えるFM3Aを送り出すニコンとうメーカーの製品を使い続けてきたことに、これほど喜びを感じたことはない。

20 JAN. 2002/Nikon D1X
Nikon D1X
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初の一眼レフデジタルカメラを購入した。コンパクトタイプのデジカメはこれまでにも6機種ほど使用してきたが、一眼レフタイプは、CCDが35mmフルサイズになってからと考えていた。しかし、現状のCCDであっても事実上の解像度は充分実用レベルに達したと思われる。何れすべての一眼レフデジカメがフルサイズCCDとなるだろう。そうすれば、このような縮小サイズCCD機種は入手出来なくなる。広角レンズ使用時には制約があるものの、反対に望遠レンズ使用時には焦点距離が1.5倍になるのはかなりのメリットでもある。焦点距離に比例して大型化、重量化する望遠レンズがワンサイズ小さく軽いもので済む。また、撮影倍率も稼げるし、被写界深度が深いことも有利に働く。これらのメリットを活かした、野鳥の望遠撮影、昆虫のクローズアップ撮影には有効だろう。

実際に手にしたNikon D1Xは、F100などを使用しF5を使用してこなかったため、かなり重く感じられる。やはり、三脚にセットてしての野鳥撮影向きで、手持ちの昆虫のクローズアップには辛いかもしれない。電源はAC以外では、専用ニッケル水素バッテリーしか使用できず、その持ちも決してよいものではない。そのため、奥地のフィールドで長期に渡っての撮影にはまだまだ使える条件を備えていない。コード接続による外部バッテリーか、ビデオカメラ並みのリチウムイオンバッテリーの開発を望みたいところだ。また、電源関係で言えば、専用バッテリーの充電器がとても大きくかさ張る。さらに、ACアダプタと充電器は共用出来ず、別途購入しなければならないところも、極めて不便。

もうひとつ、購入してから気付いたデメリットに、これまでの専用ストロボではTTLオートで使用出来ないことがある。D1発売以降のSB-28DXかSB-50DXでないと、TTL制御されない。他のメーカーではこのようなことはなく、銀塩カメラにもデジカメにも共用出来るのに、不可解なことだ。本体価格だけでも充分高価なのに、付属品までも費用がかさむのは頭が痛い。

記録媒体には、コンパクトフラッシュカードとマイクロドライブが使用出来る。記録容量とコストパフォーマンスを考えれば、当然マイクロドライブが有利なのだが、フィールドでの使用を前提にすると、対衝撃性とバッテリー消費量で有利なコンパクトフラッシュカードのほうが向いているのかもしれない。現在の市場価格から考えると、128MBのカードを何枚も準備するのが現実的なのだろうか?何れにせよ、この点では、大量のフィルムを持ち歩くのよりもかなり軽量コンパクトな装備で済むし、ランニングコスト的にもフィルム、現像代よりもかなり有利なのは間違いない。

ファーストインプレッションはかなり批判的な内容になってしまったが、総画素数547万画素(有効533万画素)でこれだけの解像度があれば、A1サイズデジタルプリントに出力するのもそう無理ではないだろう。今夏予定しているデジタル写真展用の作品製作にどれだけ活躍してくれるか、今から楽しみだ。

1 FEB. 2002
実際に10日程使用してみての印象は、最初は重いと感じていた重量にも次第に慣れてきた。

最も気になっているのは、アンダー露出になってしまうことが多い点だ。カメラ背面のモニタやTV画面での再生では余りアンダーに感じなくても、パソコンに取り込んでみると、かなりアンダー露出なのに気付くこと度々だ。撮影中にカメラモニタにヒストグラムを表示させ、度々チェックしてプラス補正を掛けることも多い。
しかし、このモニタでの再生は、露出の他にも、構図や影の出方などが確認できて、デジカメの機能では当たり前なのだが、これまでの銀塩一眼レフでの撮影では考えられない便利さと言える。しかし、コンパクトタイプのデジカメのように、撮影時にもファインダ代わりに使用でき、さらにアングル可変タイプであれば、光学アングルファインダなしにローアングルが得られてより便利なのだが…。また、このモニタの位置は、カメラを構えるとちょうど鼻が当たってしまい、画像を確認する度に表面の脂を拭き取らなければならないのは厄介だ。

使用してみると専用ニッケル水素バッテリーは、当初感じていたほど使用時間の短いものではなかった。しかし、少し使用しただけですぐにバッテリー消耗マークが表示され、ファインダ内のデータ表示がシャッター半押し時だけに限られてしまい、不便だ。この表示が出てから結構長く使用可能なので、バッテリー消耗マークを表示する設定が早すぎること自体の問題のようだ。

128MBのコンパクトフラッシュカードをセットし、初期化するとJPEG FINEモード、ラージサイズ設定で39枚撮影可能と表示が出る。しかし、JPEG圧縮は絵柄によってファイルサイズが変化するので、実際には50枚近く撮影出来ることも多く、ちょうど適当な撮影枚数に思われる。
パソコンへのデータ転送は、FireWire経由でも結構な時間を要し、なるべくなら撮影途中ではやりたくない作業だ。一方で、すべての撮影データが自動的に転送され、これまでのように撮影データのメモを取らずに済むのは圧倒的に便利な機能だ。

専用スピードライトSB-50DXは、CR123Aバッテリーを2本使用する軽量コンパクトな設計だ。いくつかの機能が自動設定されるのはよいが、ちょっとその設定から外れた条件で使用しようとすると、機能が限定されてしまったりで、余計なお節介機能が気になる。
しかし、内蔵ワイドパネルをセットするだけで、14mmレンズの画角をカバーするのはかなり便利だ。試しに、14mmの超広角レンズ、15mmの対角魚眼レンズをセットし、それぞれの最短撮影距離(18cm/15cm)で撮影してみても、画面全体に光が回っていて、これは使える機能だと思う。望遠接写用にも、バッテリー込みでも軽量であることを活かして、フード先端に伸縮ベルクロバンドで固定することが可能で実用性は高いと判断した。D1Xの1/500秒シンクロ機能と組み合わせての超広角接写撮影などに活躍しそうだ。昆虫のたくさん出現する3月が待ち遠しくなってきた。

31 Mar. 2002
購入から2ヵ月余りが経ち、銀塩カメラと比べても差を感じないレベルまで操作にも慣れてきた。

ここにきて、最も困っていることがローパスフィルタ(CCD)へのゴミの付着問題だ。事前にある程度聞いていたことだが、これ程ひどいものとは思っていなかった。魚眼や超広角レンズを最小絞り近くまで絞り込んで空などを写すと、無数の黒い小さなゴミが認められる。より被写界深度の深くなる条件で目立つため、最初はレンズ面に付着したゴミかと思ったが、どのコマも同じ箇所にゴミがあるので、ローパスフィルタ表面のものに違いないようだ。銀塩カメラで言えば、フィルム面に相当する箇所のゴミが何故このような条件で目立つようになるのかは、メーカーに問い合わせてもよく解らない。これまで、画像のデジタルデータ化で、銀塩フィルムとフィルムスキャナーの組み合わせでは、ゴミやホコリ、傷を消す作業にかなりの労力を要した。この点、デジカメは全くこの作業を伴わない点が、大きなアドバンテージだと評価していたのだが…

ミラーアップして強力なエアーダスターでゴミを除去しようとしても、なかなか巧くいかない。メーカーのサービスステーションに依頼しても1時間程も要する作業だそうだ。ゴミの付着の原因は、レンズ交換時のマウントからの侵入のように考えられているが、実際にはそれだけではないようだ。実は、最初購入したD1Xボディは、内蔵時計の初期不良のために、メーカーによる交換を受けている。その交換直後の新ボディでも、既に多くのゴミが写り込む状態だった。メーカーの担当者の話では、シャッターやミラーの駆動系から出る細かなゴミが多いそうである。1年程使い続けると、このゴミの発生も落ち着くそうなので、保証期間内にサービスセンターでこまめにクリーニングを受けることを勧められた。しかし、世代交代の早いデジカメで、この考え方はかなり厳しいものに思われる。

近く発売予定のシグマSD9は、マウント部がスッポリと光学ガラスによって覆われ、マウント部からのゴミの侵入を防ぐ構造だそうだ。しかし、ゴミの発生源が内部機構にあるとすれば、この方策も無意味になり兼ねないのだが…

5 May. 2002 / AF VR Zoom-Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D
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手ブレ補正機構内蔵の望遠ズームレンズを購入した。このところ望遠系レンズは、すっかりキヤノンに先行されてしまっている印象のあるニッコールレンズだが、唯一既発売の手ブレ補正機能内蔵のレンズが、この80-400mmF4.5-5.6だ。

どのような状況を想定しての購入かというと、林道を車で走行中に突然遭遇する樹上や路上の動物は、助手席にセットして置いてあるカメラで手持ち撮影することになる。このような場合、特に日中の撮影ではかなり威力を発揮するに違いない。銀塩カメラに装着して望遠端で400mmF5.6、メーカーの言う通常よりも3段遅いシャッター速度の1/60〜1/30sec.で撮影可能ということならば、かなり実用性は高そうだ。さらに、デジタルのD1Xに装着すると120-600mmF4.5-5.6相当になり、これが手持ち撮影可能なのだから、かなり魅力的に思える。
また、望遠端の最短撮影距離では撮影倍率X0.21になり、銀塩ボディで173X115mmの範囲が、同じくデジタルボディで115X77mmの範囲が画面いっぱいに撮影可能なので、小動物の撮影にも使えそうだ。例えば、三脚の立てられない湿地でのトンボや、干潟でのカニやトビハゼの撮影などにどうだろうか。

サイズは91X171mm1,360gだが、400mmで最短撮影距離の2.3mにセットしフードを装着すると、マウント面から約330mmもの全長になり、かなりの迫力になる(写真上)。スペックの割にレンズ径が大きいのは、手ブレ補正機構内蔵のためで仕方ないところだろう。不満なのは、回転三脚座は取り外し式になっていて、外すと重量が1,210gになるのだが、レンズをカメラボディから外した状態でないと着脱出来ない。これは、リングを緩める方式ではなく、シグマなどで採用されている分割式でボディを装着した状態でも着脱可能なほうがはるかに便利だ。また、ロックねじの径も小さく操作しにくい。

このレンズで最も興味のある手ブレ補正機能の実力だが、D1Xボディに装着し、400mmの望遠端(600mm相当)で絞りF5.6開放にセット、最短撮影距離の2.3mで手持ち撮影してみた。シャッタースピードは1/6sec.と表示されていた。手ブレ補正機能をONにしたのが左下の写真。同じくOFFにしたのが右下の写真で、その差は一目瞭然である(LARGE/FINEモード/ISO400で撮影し、シャープネス処理などせずに、ノートリミングで表示)。室内でテーブルに肘を付きながら慎重にレリーズしたとは言え、撮影倍率も高く、保証されているシャッタースピードよりもさらに4段近くも低速シャッターなのに、実用的な画像クオリティをクリア出来ているところが凄い(元データでは、最も小さな文字も解読出来る)。

スペック、手ブレ補正の実力とも満足のいくものだが、どうしてもライバル製品との比較がしたくなるものだ。そのライバルレンズは、現行ではキヤノンEF100-400mmF4.5-5.6L IS USMしか見当たらない。焦点距離はワイド側でニコンのほうが20mm広いが、この焦点域でワイド側での使用頻度は高くないので、それほどの差には感じられない。サイズは、キヤノンのほうが直径で1mm、全長で18mm長いが重量は全く同じで、この点ニコンが勝っている。
フィルタ径はどちらも77mmだが、最短撮影距離はキヤノンが1.8mとニコンより0.5mも短く、かなり有利に思える。しかし、キヤノンはインナーフォーカスとフローティング機構を採用しているのに対し、ニコンのほうはどちらの機構も不採用。一見、旧式の設計にようにも感じるが、実はこれらの機構は、近距離撮影時に実際の焦点距離が短くなってしまい、撮影倍率が上がらない弱点があるのだ。そのため、最大撮影倍率は、ニコンの0.21倍、キヤノンの0.20倍と反対にニコンのほうがわずかながら高い数値になっている。
一方、キヤノンはフォーカスがレンズ内超音波モーターなのに対し、ニコンはボディ側通常モーター駆動で、作動速度でも作動音でも劣っている。この点は、早急に改善して貰いたいものである。
14群17枚構成中、螢石レンズと異常分散(UD)レンズを各1枚ずつ採用しているキヤノンに対して、11群17枚構成中、3枚の異常分散(ED)レンズを採用しているニコンの描写性能の差だが、キヤノンレンズは手許にないので、実写による比較は出来ない。メーカーから発表されているMTF曲線を参考にすると、広角側ではニコンが、望遠側ではキヤノンの性能が勝っているようだ。このジャンルのレンズの使用法からすると、望遠側重視の設計のほうがありがたい。
最後に定価は、ニコンの¥230,000-に対し、キヤノンの¥260,000-なのだが、ちょうど超音波モーター分の差額のような気がしてしまう。

25 Mar. 2004 / NikonD70
NikonD70
ニコンから待望の新型レンズ交換式デジタル一眼レフ、D70が発売された。ニコンはもちろん、現時点の同ジャンルの製品の中でも、最も低価格に設定されているにもかかわらず、その性能は中級機並みかそれ以上だ。露出モード、測光モード、測距モードの何れも、ほぼフルスペックである上に、最高シャッタースピード1/8000秒、ストロボ同調最高速度1/500秒は、最上位機種に匹敵する。さらに特筆すべきは、連続撮影枚数。高速のCFカードを使い、JPEGモードで撮影すれば、秒間3コマながらカード容量いっぱいまで、ほぼエンドレスで撮影可能なのだ。これは、まだ他のどの機種でも達成されていない快挙だ。
厳密な画質テストは専門家に委ねるとしよう。カメラ雑誌などのテストレポートによれば、NikonD100やCanon EOS Kiss Digitalなどと比較しても、おしなべて自然でクリアな画像と好評だ。個人的には、常用機種のD1Xと比べるしかないが、明らかにどちらの機種が劣るというような大きな差は見出せない。
重量と大きさも、D100に比べてひと回り小型で、100g近く軽量化されている。PENTAX* ist Dの550gやEOS Kiss Digitalの560gには負けるが、ボディのみ595gはフィルムカメラと同等な数字と評価出来るだろう。特に現在常用しているD1Xの1,100gに比較すると半分近い軽さになる。
これだけの性能でありながら、定価¥150,000-(税別)、実売12万円前後というのだから、そのコストパフォーマンスの高さに驚かされる。
ニコンD1の発売によって、デジタル一眼レフが個人でも手に入る時代になり、D100により定価30万円で実売20万円を切り、そしてこのD70によって、いよいよ価格でもフィルムカメラに対抗出来るところまでやってきたのだから、この機種の発売の意味は大きいだろう。

現時点の最大のライバルは、先に発売されているCanon EOS Kiss Digitalであることは間違いない。しかし、EOS Kiss Digitalは、その上位機種に当るEOS 10Dとの関係を重視し、グレードの差別化をはかるために、わざとスペックダウンしているような印象が拭えない。もう少し努力すれば、10DのスペックがKiss Digitalの価格で実現できてしまうのではないかと疑いたくもなる。
その点、NikonD70はネーミング上明らかに上位機種に当るD100の存在など無視したような、スペック満載である。これによって、近いうちにD100が姿を消すのは間違いないだろう。

実際の撮影でも、各種ボタン、ダイアルの配置もよく考えられていて、操作性は悪くない。ボタン、ダイアルの操作感覚は、D1Xクラスの高級感はないが、それほど安っぽいものでもない。全体に大きな不満はないが、一番の欠点はファインダーの見え具合である。ペンタプリズムではなくペンタミラーを採用しているために、やや暗くクリア感に乏しい。さらに、暗い状況では、フォーカスエリアを表示するLED照明がエリア外にも漏れ、フレーミングにも支障が出そうだ。

さらに使用を重ねていくと、リモートターミナル、シンクロソケットがないなどの欠点も見えてきた。しかし、最大の欠点は、SB-800を除いた外付けストロボでは、TTL調光機能が働かないことだ。これまで発売されているストロボでは、マニュアル発光、あるいは外部調光でしか使用出来ない。撮影結果をすぐに確認できるデジタルカメラであっても、露出決定の難しい接写などでTTL調光が使えないのは致命的と言える。
TTL調光可能な小型ストロボSB-600は、3カ月も先の発売予定になっている。しかし、この機種がD70ボディと同時発売であっても、これまで所有してきたほとんどのストロボが事実上使用不能というのは、ユーザーにとって大きな損失だ。これは、デジタル一眼レフD1が発売された時点で、銀塩カメラ用のストロボのTTL調光機能が使えなくなったのに続くメーカーの愚挙としか言い様がない。
最新のi-TTL-BL調光でなく、せめて簡易TTL調光でもよいから使用可能であれば、D70の存在価値が飛躍的に向上すると思うので、大変なデメリットである。これは先に発売されているD2Hでは実現しているのだから、多少の価格上昇には目を瞑っても、是非D70にも搭載して欲しい機能である。
救いは、内蔵ストロボでも、100mmクラスのマクロレンズの最短撮影距離まで画面全体をムラなく照射可能なことだろう。しかし、レンズの光軸から離れた位置にある小さな発光部に余り多くを期待するのは無理というものだろう。(60mmマイクロレンズの最短撮影距離(等倍)では、画面下部1/5程度に影が出る。DX Fisheye Nikkor10.5mmでも、最短撮影距離では画面下部1/4程度がやはり陰る)

小型軽量、高機能で、D70単独で使用するには高いパフォーマンスを発揮することは間違いない。ストロボ内蔵機種でもあり、軽い装備で気軽に撮影するときなどに、なかなか便利だろう。しかし、D1Xなどのサブボディとして使うときには、ストロボ、バッテリー&チャージャー、アングルファインダーなどを別途準備しなければならず、余り効率的な機材の組み合わせにはならない。ましてや、持ち歩ける機材に限界のあるフィールドワークでは、現実的とは言えないだろう。
是非1日も早く、現行ストロボ機種でもTTL調光可能な改良機種(D70II?)、あるいは全く別の設計でもよいから、D1Xなど上位機種の真のサブボディとなりうる機種を発売して欲しいものである。

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