南島漂流記
2005年3月後
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アフリカホウセンカ
NikonD1X Tamron18-200/3.5-6.3
2005.3.31

 ある場所にアフリカホウセンカの咲き乱れる小径があります。やっと車が一台通れる幅の曲がりくねった数百mの間に、一年中、色とりどりの花が咲いているのです。
 しかし、やはり真冬には花が疎らで寂しく、夏の炎天下では元気なくしなだれています。観るだけならば、いつでも幻想的な場所なのですが、写真を撮るとなると、意外に難しいものです。
 どんよりと薄暗く、朝からの肌寒い小雨、、、もう明日からは4月なのにと思います。ところが、意外にもこんな空模様の日にも、魅力的な光景に感じられるのでした。でもやはり、いつか天気のよい日に、雰囲気の感じられる写真を撮りたいものです。

2005.3.30 

 このところ、自動撮影用のカメラを紹介をし、3号機、2号機と遡っていたのに、まだ初代1号機を紹介していませんでした。
 この1号機は、1991年にオキナワトゲネズミを撮影する目的で製作したものです。カメラ本体は、ニコンF301というフィルム一眼レフを使用しています。さらに初期にはF501という機種を使用していました。カメラにストロボを装着したものを、食パン保存用のタッパーを利用した容器に収納しています。右側の丸い筒状のものが、体温感知センサーで、来客を知らせるチャイムを流用しています。これをひとつの三脚上にセットしています。
 このセットで、山原(やんばる=沖縄本島北部)の固有種のオキナワトゲネズミの本格的な撮影に初めて成功したのです。当時は、半透明の容器そのままの状態で使用していましたが、最近になってヤマネコ用に迷彩塗装を施しました。今も、留守にしている西表島の山の中で、ヤマネコの出現を監視し続けています。

 


自動撮影カメラ1号
Ricoh Caplio GX


新刊『亜熱帯林にかくれるコノハチョウ』
Ricoh Caplio GX
2005.3.29

 久しぶりに新しく本が出ました。偕成社の「虫から環境を考える」シリーズの第6巻『亜熱帯林にかくれるコノハチョウ』です。
 このシリーズは、日頃ご指導を頂いている昆虫写真家の海野和男さんが、企画を出されたもので、監修もなさっています。CD-ROMやDVDを別とすると、実に7年ぶりの書籍となります。
 亜熱帯林の渓流環境に生きるコノハチョウの一生とカムフラージュの様子、近年個体数を減らしている背景などを紹介しています。
 ひとつ残念なのは、コノハチョウの代表的食草セイタカスズムシソウが枯死してしまった年に製作したため、新しく撮影した写真が1点も加えられなかったことです。

2005.3.29

 久しぶりに西表島から沖縄本島に戻ってきました。空港から直行で本部(もとぶ)半島を訪ねました。前々から気になっていた昨年春に枯死してしまったセイタカスズムシソウの様子を見るためです。
 コノハチョウの食草の代表的なセイタカスズムシソウは、8〜10年周期で一斉に枯れてしまう性質を持っています。昨年6月に既に完全に枯れている状態に気付いたので、恐らく4〜5月には枯れ始めていたのでしょう。昨年末にも、まだ枯れたままの状態で、全く再生する様子が見られませんでした。
 そして今日、一部の場所で、枯れた茎の間から、芽を吹いた小さな株が出ているのが確認出来ました。これから少しずつ生長し、以前の状態に戻っていくことでしょう。そして、何処かで細々と生き存えてきたコノハチョウが、これに産卵し、また徐々に個体数を増して欲しいものです。


芽生えてきたセイタカスズムシソウ
Ricoh Caplio GX


アシマダラヤセバエの求愛行動
Ricoh Caplio GX
2005.3.28

 寒い寒いと感じながらも、自然の世界は着実に春に進んでいるようです。林道を歩いていると、下草の葉の上にアシマダラヤセバエの姿を度々見かけるようになりました。そして、昨日は盛んに求愛行動を繰り返していました。
 先端の白さが目立つ前脚を触角のように前に突き出して、不思議なパフォーマンスを見せてくれるのはいつものことなのですが、求愛のときはさらにそれがエスカレートしてユーモラスです。
 多く見かける種なので、これまでも何度となくレンズを向けてきましたが、和名の「アシマダラ」の意味を今日初めて理解しました。先端部の白いのが「マダラ」の由来だと思い込んでいたのですが、実際は付根に近い側が褐色と黒の斑模様になっていたのですね。
 今日は早朝から激しい雨です。彼らは何処でどうやって凌いでいるのでしょうか。

2005.3.27

 昨日に続いて、自動撮影カメラの話です。この2号機は、スチル撮影用ではなく、ビデオ撮影用です。スチル撮影用に比べて、夜間用の照明も必要ですから、余りコンパクトにはなりません。
 しかも、かなり電源を喰うので、車用のバッテリーを使用します。40A前後の容量のものを使用しても、48時間程度しか作動しないのが悩みです。さらに、気温が低下すると36時間程度になってしまいます。そのために、1日おきに8kg前後あるバッテリーを担いで交換しに行かなければなりません。その重量もさることながら、一度セットしたら、出来るだけその場に近寄らないほうが、野生動物の撮影のためには好ましいのですが・・・。
 この防水ケースは、離島の宿泊先で有り合せの材料から急遽造ったものです。最初はビデオカメラにレインカバーを着けて置いていたのですが、ある日の大雨で酷い結露をしてしまったので、その復旧作業の合間の数時間で造り上げました。ところが、現在使用している自動撮影カメラの中では、最も防水性に優れているのですから意外なものです。
 もちろん、この撮影セットも迷彩にしてあります。これは、被写体の野生動物に警戒されない目的もありますが、対人間の盗難や悪戯予防の意味合いも大きいのです。


自動撮影カメラ2号
NikonD1X Tamron18-200/3.5-6.3


自動撮影カメラ3号
Ricoh Caplio GX
2005.3.26

 野生動物の撮影には、昨日紹介したブラインドテントに身を隠して、現れるのをひたすら待つ方法と、自動撮影カメラによる方法があります。後者は、センサーが動物を感知して自動的にカメラのシャッターを切るものです。センサーは、以前は赤外線のビームを張って、それを横切ると感知するタイプでしたが、今では、自動ドアなどにも使われている体温感知タイプです。従って、基本的に恒温動物にしか使えません。
 また、使用するカメラも以前はフィルムカメラでしたが、今回、新しくデジカメ用のものを造りました。カメラやレンズの防湿保管ケースを利用して、比較的コンパクトに出来ています。シリコンのパッキングが使われているため、防水性は心配していなかったのですが、先日の激しい雷雨でかなり浸水していました。やはり過信せずに、事前のテストを怠ってはいけませんね。
 また、外装の迷彩パターンも、今回初めて自分で描いてみましたが、意外と難しいものです。野外に置いて遠くから見ると、それ程でもありませんが、近くで見ると「?」な出来です。
 中に収納されているカメラも以前はフィルムカメラで、シャッターが切れていても現像するまで何が写っているか判らなかったのです。それが、デジカメですと、その場で成果が確認出来ますし、テスト撮影を気の済むまでしてからその画像を消すことも出来るので、正に自動撮影に打ってつけです。テストでは、特に外部電源を設けなくても、1週間以上バッテリーが持つのも助かります。でも、まだカラスが一度写っただけで、まだこれと言った成果があがってません。これから、どれだけ活躍してくれるでしょうか。

2005.3.25

 新しいレンズを購入しました。デジタル一眼レフ専用のズームレンズです。35mmフルサイズに換算すると、広角27〜望遠300mmの11倍超のズーム比になります。これまでは、シグマの18〜125mmという約7倍のズームレンズ(写真左)を使用していました。
 望遠側の明るさにやや不満がありますが、400gを切る重さと、これまでの7倍ズームと大差ないサイズにまとめられているのは驚きです。さらに、焦点距離全域で最短撮影距離が45cmで、300mm望遠端では結構な撮影倍率が得られます。正にオールインワンで、通常の撮影にはほとんどこれ1本で事足ります。
 フィルムカメラ用にも、ほぼ同様のジャンルの28〜300mmというレンズが存在します。世の中で最も売れているレンズかもしれません。しかし、フィルムカメラ全盛の時代には、このようなレンズの購入を考えたことはありませんでした。一眼レフを持ってるものの、このレンズ一本を付けっぱなしでの観光旅行用というようなイメージで、魅力を感じられなかったのです。しかし、売れ筋商品だけに、メーカー間の競争も激しく、性能もかなりのレベルになってきました。最近は、ビデオ撮影がメインになり、スチル撮影の機材はなるべく少なくしたいという理由から、今回の購入に至ったのですが、数10カット試写してみた段階では、大きな欠点は感じられません。


TAMRON AF 18-200mmF3.5-6.3 XR(右)
Ricoh Caplio GX


撮影用迷彩ブラインド
Ricoh Caplio GX
2005.3.25

 野生動物撮影用のブラインドテントを購入しました。これまでも何種類か使用してきましたが、今回購入のものは、日本野鳥の会で企画販売しているワンタッチ組立式のものです。
 これまでも、似たようなタイプのものも使用していましたが、それはまずアルミフレームを組み立てて、テント地を被せるという構造で、しっかりはしているのですが、組立・撤収に時間が掛ります。即座に撮影ポイントを決めて、被写体の動物に警戒させることを最小限に止めて撮影態勢に入るには不向きでした。その点、今回購入のものは威力を発揮しそうです。
 ただ、四面にそれぞれ丸めて折り畳める金属フレームが入っている構造なので、余りコンパクトには収納出来ません。また、晴天用と謳ってあるように、雨天時の防水性はあまり期待出来ないようです。これからは、状況に応じての使い分けになりそうです。

2005.3.23

 ヒメキランソウの花が満開の季節を迎えています。地面を覆い尽すように、紫色の花が広がっていると、遠くからでも、ハッとします。目に訴えかけるような鮮やかさです。
 今の季節になると、度々立ち止まって、じっくり花を眺めたり、写真を撮ったりするのですが、どうも遠くで見たときの感動が伝わってきません。ひとつひとつの花は、それ程興味をそそる存在ではないのです。それに、次から次へと開く花は、どれも新鮮で奇麗なものばかりではなく、結構くたびれたものも目につきます。
 遠くから眺めていたほうが魅力的というのは、昨日のトウワタとは正反対です。花も種類によって、相応しい鑑賞距離というものがあるのでしょうか。


ヒメキランソウ
Ricoh Caplio GX


トウワタの花
Ricoh Caplio GX
2005.3.22

 トウワタの花は、ランタナの花のように赤〜オレンジ〜黄色の組合せで、小さな花が集合している好きな植物のひとつです。その細かな構造を観察していると、飽きることがありません。
 トウワタは、毒蝶カバマダラの食草のひとつです。アルカロイド系の毒が含まれていて、幼虫時代にその毒を摂取して体内に貯え、成虫になってからも捕食者の攻撃を回避しているのです。
 しかし、この花の造りや蜜を舐めにやって来るアリの姿を眺めていると、そんな有毒植物であることを、つい忘れてしまいます。

2005.3.20

 干潮のマングローブ林に降りて、シレナシジミを探してみました。ちょうど浅い水際に、巧い具合にひとつの貝が姿を見せていました。
 先月27日に紹介しましたが、幅が13cm前後にもなる巨大シジミなのです。これが、マングローブ林の泥の中に生息しているのですから、さすが亜熱帯の生き物と思わせる迫力です。しかし、実際には泥の中に潜っていることが多く、掘り出さないと姿が見えないので、このような自然の状態で写真撮影出来ることは、あまりありません。背景に典型的なマングローブ林が広がり、亜熱帯らしい木漏れ陽に照らされた姿を現すために、魚眼レンズで近付いてみました。


マングローブ林に生息するシレナシジミ
NikonD1X DX Nikkor10.5/2.8 Fisheye


セイシカの花
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED
2005.3.20

 セイシカの花が満開を迎えています。国内では、西表島と石垣島の山奥にわずかしか自生していないので、幻の花と呼ばれています。2月上旬からポツポツと開花しているのを見ていましたが、今がピークのようです。
 淡いピンク色の花弁にオレンジ色の斑紋が特徴です。しかし、この淡い色彩は微妙で、天気がよく光線が強いとなかなか写真で再現出来ません。かと言って、山の中の梢に花を着けますから、余り暗くても困ります。適度に柔らかな光線状態で、風の弱いときがセイシカの撮影日和と言えます。
 元々株が少ないため「幻の花」と呼ばれていますが、その希少性から山から持ち去られることも少なくないようです。それから栽培された株が一般に見られるようになりましたが、野生株は益々「幻」となっているようです。

2005.3.19

 先日購入したジムニーの走行距離が100,000kmに達しました。と言っても、購入時に既に99,800kmになっていましたから、大した話ではないのです。それよりも、平成6年型の車が、まだ10万kmを超えていなかったのが珍しいくらいです。
 今年の西表島での撮影では、この車には活躍してもらうことでしょう。重い機材をたくさん積んで、悪路や泥濘を走ることが多いと思いますが、老骨鞭打って頑張って欲しいものです。
 11年ぶりに乗った軽自動車のジムニーですが、狭いながらも楽しい我家的楽しみが蘇ってきました。例えるならば、三畳一間あるいは四畳半一間のマイルームとでも言うような、限られた空間を工夫して使う、必要な物にすぐ手の届くような楽しみです。11年前の四駆ですから、ウィンドウの開閉も手動なのですが、助手席のドアにもすぐ手が届きますし、2ドアですからほとんど不便は感じないのです。


099999->100000km
Ricoh Caplio GX


車に轢かれたシロハラクイナ
NikonD1X Sigma18-125/3.5-5.6
2005.3.18

 イリオモテヤマネコの一番の好物はシロハラクイナという鳥です。実際のところ、好物なのか否かはネコに訊いてみないと分りませんが、最も食べられる頻度が高いようです。
 このシロハラクイナ、水田などの水際に多くみられますが、道路脇の茂みに潜んでいることも少なくありません。そして、度々路上にも出没します。出没どころか、突然飛び出して車に轢かれてしまうこともしばしばあります。
 かつては普通に見られた動物が生息数を減らしていく現代ですが、何故かこのシロハラクイナは近年、数を増やしているようです。それには、どのような背景があるのでしょうか?
 地元では「スピード出し過ぎ、シロハラクイナもハ〜ラハラ」というローカル交通標語もあります。念のため、このクイナを轢いたのは、後に停まっているジムニーが犯人ではありません。

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