南島漂流記
2004年4月前
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ナンゴクネジバナ
NikonD1X Sigma105/2.8Macro PL-Filter
2004.4.15

 山原(やんばる=沖縄本島北部)でも、ナンゴクネジバナの満開の季節を迎えています。3月9日に沖縄本島中部で咲き始めたことを紹介しましたから、1カ月余り遅れて北部まで開花したことになります。
 この花は、何度見ても「可憐」という言葉が思い浮かんできます。螺旋状に咲く小さな花は、拡大して見ると、ランの形をしています。白色を基調に先端だけが紅色をしているところなど、本当に心憎いデザインです。
 今日の山原は、ときおり小雨が降る生憎の空模様でしたが、このナンゴクネジバナにレンズを向けて間もなく、雲の間から逆光気味の光が射し、より一層魅力的な被写体となりました。

2004.4.14

 シロガシラは、今では沖縄本島の何処でも普通に見られる鳥ですが、1976年に侵入してきたと言われています。その後10年程で、普通に見られる存在になったようです。私が沖縄にやって来たのが1978年ですから、少しだけ先輩ということになります。
 自分自身が沖縄にやってきてからのことはある程度分りますが、それ以前の出来事となると、時間的観念が希薄なものです。ですから、このシロガシラも、図鑑を見るまではもっと以前から普通に見られたような気でいました。
 このような例は他にもあります。琉球大学に入学した当時、ヤシオオオサゾウという大型のゾウムシが、琉大のキャンパス内に大発生していました。それこそゴロゴロといたので、それが普通の状態だと思って、すぐには撮影しなかったのです。数年経ち、さて撮影してみようかと思ったところ、もう全くいません。研究室にたくさん残された標本を前に、悔しい想いをしたものです。
 やはり同じような例にキョウチクトウスズメという蛾がいます。これもキャンパス内のキョウチクトウで大発生していました。成虫の翅(はね)の模様はまるで迷彩パターンのようで、とても興味深い存在です。何れ、じっくり撮影しようと思っていたら、これまた忽然と姿を消してしまったのです。それでも諦め切れずにいると、それから10年後に再び発生し、こちらは想いを遂げることが出来ました。
 さて、このシロガシラ、まさか姿を消すことはないと思うのですが、もっとしっかり撮っておかないと、何れ後悔するでしょうか?


シロガシラ
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED


満開のデイゴの花
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6ED PL-Filter
2004.4.13

 わずか3日間留守にしていた沖縄ですが、その3日間で急に気温が上昇しました。昨日も触れたように「暖かい」から「暑い」へ季節が移ったようです。
 そのような気候の変化で、デイゴの開花が一気に進んだ気がします。前回紹介した7日の時点では、早い木では3〜4分咲きといった印象でしたが、今日は同じく7〜8分咲きといったところでしょうか?さらに、これまで全く花の見られなかった木でも、ほころび始めているのが目につきます。
 汗ばむような陽気と初夏の陽射しの下で、燃えるようなデイゴの花が咲く、正に亜熱帯シーズンの開幕といった印象です。

2004.4.12

 ニンジンの白い花を見ると、いかにも昆虫の集まりそうな印象を受けます。実際には、ハエとミツバチと毛虫がほとんどなのですが、見映えのする種と言えば、このアカスジカメムシでしょう。白い花の上に、オレンジ色と黒のストライプの模様はなかなか映えます。
 そう思って探し始めたのですが、それ程多くはありません。やっと見つけてみると、それは交尾ペアでした。さらに、お邪魔ムシのオマケも付いていました。次に見つけたのも、やはり3匹ワンセット。さらに次も同じ状態・・・やっとペアだけでいる状態を見つけたのは5つめの花でした。これは、単なる偶然にしたら余りにもあり得ない確率です。何故、1ペアプラス1なのでしょうか?そして、1ペアプラス2でも3でもないのですから、なおさら不思議です・・・


アカスジカメムシ、三角関係
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight


夕陽に照らされたニンジンの花
NikonD1X Sigma105/2.8Macro
2004.4.12

 4日ぶりに戻った沖縄は、すっかり初夏の陽気です。福岡に入った金曜日は沖縄よりも福岡のほうが暖かい印象でしたが、今日の沖縄は明らかに汗ばむ暑さで、「暖かさ」を上回っていたと思います。
 そのような陽気の中、夕陽に照らされたニンジンの花が印象的でした。事務所近くの放置された畑に一面のニンジンの花が並んでいます。すっかり傾いた斜光によって浮かびあがった花の集団は、何処か初夏を迎えたエネルギーが感じられました。
 放置された畑というと、あまりよい響きでないかもしれません。しかし、定期的に収穫をし、季節毎に作物を更新している畑では、なかなか花を見る事も出来ませんし、そこにやって来る昆虫を探す楽しみもありません。このように適度な状態で放置されている畑というものは、私たちにとってはかなり魅力的な場所なのです。

2004.4.11

 福岡からの「南島漂流記」も今日までです。写真展会場の北九州市郊外の皿倉山頂上からの眺めは、とても迫力があると紹介しましたが、季節がら春霞に覆われていることが多く、なかなかクリアな遠望が叶いませんでした。今日も天気予報は曇りだったのですが、昼前からよく晴れ渡り、このような景色が広がりました。
 ありふれた都市風景ですが、私にはちょっとした感慨があります。私自身は東京生まれですが、父は北九州の生まれです。写真中央左寄りの地域が北九州市戸畑区で、祖父の代から居を構え、私の本籍もここにあります。さらに、画面中央右端辺りが、小倉区という地域です。私の先祖は、この小倉(小笠原)藩の下級武士の家系だったそうです。言わば、この一帯が私のルーツといったところなのです。
 しかし、もし1945年8月9日の朝、小倉の上空が晴れ渡っていたのなら、このようにはならなかったかもしれません。というのも、その日長崎に投下された原爆の第一投下目標は、小倉だったのだそうです。その当時、父は東京にいましたが、祖父は勤めの関係で小倉にも頻繁に通っていたそうです。もし予定通りの小倉に投下されていたら、直接的な被害は免れたとしても、近隣地域まで大混乱となり、終戦後に私の両親が結婚することもなかったかもしれません。となると、私は生まれなかったということになるのでしょうか?


皿倉山から眺めた北九州市
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter


さらくら市民ギャラリー写真展会場
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6
2004.4.10

 北九州の皿倉山に来ているのは、山頂にある「さらくら市民ギャラリー」で「琉球列島-亜熱帯の森」写真展を開催するためです。額装していないA1サイズデジタルプリントでの特殊な展示方法のため、設営(展示作業)とオープニングだけ立ち会った次第です。
 いつも写真展の場合、ほぼフルタイムで会場に詰めていないと気が済まない質なのですが、今回は、会期が5月31日までとロングランなのと、会場が遠方という理由から、2日間だけで諦めざるを得ません。
 会場は、ケーブルカーとリフトで上がる620m余の山頂にあって、ほぼ北九州市全域が見渡せる大パノラマが展開しているすばらしい環境です。会場でお目に掛れないのが残念ですが、お近くにお越しの方は是非、足を伸して頂けたらと思います。
 今回の企画は、写真家の四宮佑次さんに帆柱ケーブル(株)の運営する会場をご紹介頂き実現したものです。また、昨日の設営では、写真家の武田晋一さんにもお手伝い頂き、今日の初日を迎えることが出来ました。

2004.4.9

 今日は「南島漂流記」番外編で、九州からの映像です。今、北九州市の郊外にある皿倉山という処に来ています。麓では、まだソメイヨシノの淡い桜色が残っていますが、600m余りの山頂付近では、純白のオオシマザクラが満開です。
 ここ何年も、沖縄のカンヒザクラの紅色か、たまたまタイミングよく見られた東京のソメイヨシノだけを見慣れていた目にとって、この純白の大振りな桜はとても新鮮に感じられます。
 日中、よく晴れ渡った山頂のサクラの周りにはクマバチやハナアブ、ハナムグリなどの甲虫と、さまざまな昆虫の姿が見られるのですが、沖縄のフィールドしか知らない私には、種名がさっぱり判りません。


オオシマザクラの花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter


デイゴの花
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6ED PL-Filter
2004.4.7

 早い株ではデイゴの花が咲き始めました。私の子供の頃の東京では、入学式というと桜(ソメイヨシノ)の季節でした。沖縄ではカンヒザクラなので、入学式の頃には、既に葉桜とサクランボになっています。その代わりが県花のデイゴなのかもしれません。
 ただ、県花に指定されているのに、マレー半島原産の外来種なのです。しかし、その点を考慮しても、県花に指定したくなるのも解るような気がします。それだけの華やかさが感じられます。
 最近、デイゴやホウオウボクなどの外来園芸種の花着きがよくなってきたような気がします。これまでは、より南の地方に生育している植物にとって、沖縄の気候ではやや無理があったのかもしれません。それが、昨今の暖冬傾向で、生育状態がよくなってきたのでしょうか。

2004.4.6

 3月14日も紹介したヒメユズリハの花の再登場です。花を見たのも初めてでしたが、実はこれまで和名の由来の「譲り葉」の状態を見たことがなかったのです。新旧の葉の入れ代わりが顕著で、それが子孫繁栄に繋がり、正月などの行事に使われる理由だとかの逸話は記憶にあったのですが、どうもそれらしい状況を見たことがないので、ピンとこないままでした。
 それが、この状態を見て、とても納得した次第です。花を境にして、正に散ろうとしている古びた葉と、これからスクスク生長していこうという若葉が同時に見られます。正に新旧の入れ代わりの瞬間といったところです。
 しかし、初めてこの状態を目にして、果たしてヒメユズリハの木だと気付いたでしょうか?この状態だと、大きな特徴である、葉柄の鮮やかな赤色がほとんど目立ちません。3月14日の状態と連続して見たことによって、初めて気付いたのだと思います。


ヒメユズリハの葉の更新
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED Speedlight


イルカンダの花
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED Speedlight
2004.4.5

 今、山原(やんばる=沖縄本島北部)で目立つ花というと、センダンとこのイルカンダでしょう。センダンの花が淡い藤色で、如何にも春らしい色彩ですが、イルカンダのほうは亜熱帯らしいとでもいうイメージでしょうか?
 太い蔓で高木に巻き付き、高く高く伸びるマメ科の植物です。花の後に出来る巨大な豆の鞘も印象的ですが、この花自体もなかなかの存在感です。撮影したときは曇っていましたが、好天の木漏れ日を背景にしたイルカンダの花は、かなり鮮やかな色彩に映ります。
 亜熱帯の森らしさを演出してくれる植物として、決して嫌いではないのですが、この花から放たれる臭いだけは、ちょっと頂けません。例えるならば、ほこりっぽい汗の臭いとでも言ったところでしょうか。しかし、人間にとっては不快な臭いですが、きっと一部の昆虫にとってはとても魅力的な香りなのでしょう。このような例はいくらでもあります。新緑の主役のスダジイの花もクリにそっくりな臭いですし、あの巨大なラフレシアの花の臭いもかなりのもののようですしね。

2004.4.4

 先週(3月28日)に続いて、春の甲虫、オオシマオオトラフコガネの珍しい虫に出会いました。というのも雌成虫なのですが、これが先週の黒色型に負けず劣らず、なかなかお目に掛れない存在なのです。恐らく、雄100匹に対して雌1匹くらいの割合ではないでしょうか?
 雌雄を見分けるポイントは、触角が小振りなのと、胸部(前胸背板)の中央に模様が見られないことです。あとは、全体に華奢な印象も受けます。
 もう20年近く前に、この珍しいどうし「黒色型」と「雌」の組み合せの虫を見たことがあります。単純に計算すれば、10,000分の1以下の確率ということになりますが、やはり後にも先にも、それ1匹限りです。
 恐らく通常であれば、雌は地中から羽化した直後に、雄に見つけられて交尾すると思うのですが、風も強く肌寒い今日は雄の姿も少なく、この雌自体も余り動かずにじっとしていました。


オオシマオオトラフコガネ雌成虫
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight


リュウキュウウラボシシジミ
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight
2004.4.4

 昨日から山原(やんばる=沖縄本島北部)で撮影中なのですが、またまた生憎の天気の巡り合わせのようです。小雨混じりの天気に加え、気温も低いので昆虫の活動も今ひとつです。ときおり遭遇する昆虫も、いつものような機敏な行動が見られません。しかし、中にはそれが好都合な昆虫もいます。
 例えば、このリュウキュウウラボシシジミ。前翅(ばね)の長さが約11mmと、日本最小のチョウである上に、落ち着いてとまるということをなかなかしません。さらに、翅の表側が黒、裏側が白なので、羽ばたくと白と黒のフラッシュ効果によって、見失い易いという特徴があります。
 そのような性質のために、いつも撮影には苦労するのですが、今日はいつもよりもじっととまっている時間が長く感じられました。そのために数10枚のシャッターを押すことが出来ました。
 撮影時のファインダーの中でも気付いてましたが、このリュウキュウウラボシシジミの翅の模様は、とてもコントラストがあり鮮明です。これは羽化直後の証しですが、やがて翅が擦れて不鮮明になっていくものです。

2004.4.3

 一昨日は、エープリルフールねたに利用させてもらったインドキワタ。その際、インドキワタのことは何も紹介していませんでしたので、罪滅ぼしにもう一度登場願いました。
 樹高30mに達し、花の直径も10数cmもあり、なかなかの迫力です。沖縄でキワタの仲間というと、冬にピンク色の花を着けるトックリキワタがポピュラーですが、最近はこのインドキワタが街路樹として植栽されている通りも増えました。花の色は、写真のように赤に近いオレンジ色から黄色いに近いオレンジ色まで変異があります。
 キワタ(木綿)という名のとおり、花の後に見られる実の中には、綿状の繊維がギッシリ詰まっています。以前、この実を拾って車内に置いておいたところ、綿毛が車内のあちらこちらに散らばってしまい、その片付けに苦労した経験があります。
 この綿は、枕や救命胴衣に使用されると資料に記されています。資料によっては、キワタ科ではなくパンヤ科とされているものもあります。また、インドキワタという和名で呼ばれていますが、実は南米原産で、インド産のもので記載されたためにこのように呼ばれるようになったのだそうです。それにしても、インドキワタに関する資料が少なく驚きました。あるいは、もっとポピュラーな別名があるのでしょうか?


インドキワタの花
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED


インドキワタの花
NikomD2X DX Nikhor9-18/2.8-3.5ED
2004.4.1

 実はオフレコなのですが、今秋発表される新型デジタルカメラとレンズのテストをしています。名称もまだ未定で、仮称です。詳しいスペックをご紹介出来ないのが残念ですが、これならばライバル会社のフラッグシップ機にも決して負けない機能といって間違いありません。当面、この機種で引け目を感じることはないでしょう。そして、レンズもこれまで広角系に不満のあったデジタル一眼レフにとって、画期的とも言える35mm換算で14〜28mmとなる超広角ズーム。今日の写真は、その広角端で撮影したものです。周辺にやや像の流れが認められますが、発売までにはさらにグレードアップされていることでしょう。
 そんな画期的な機材のテスト撮影なのですから、亜熱帯らしい青空バックであって欲しかったのですが、今日も生憎の曇天。メーカーからの機材提供も極限られた日数のため、実に残念です。
 と言うのは全くの冗談で、使用した機材はいつものD1X。レンズは魚眼の10.5mmを画像取り込みソフト上で歪みを補正して超広角風の映像になっています。4/1ネタでした・・・

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