南島漂流記
2006年2月前
>戻る

2006.2.15

 今日、撮影に充てられたのは夕暮れ間近の時間帯。このところ連日のように通っていたのとは別の場所だったので、被写体探しの勝手も違います。昆虫のやって来る花も少なく、いつも相手にしているような昆虫の姿もありません。
 ところが、そこはとてもバッタの多い環境であることに間もなく気付きました。早速、虫の眼レンズでバッタの顔間近まで近寄りシャッターを切りました。その多くは、地上にいた個体です。そのためにカメラも地上に置いた状態で撮影しています。その結果、バッタの目線よりもより低いところから見上げたような映像を得ることができました。また、手持ち撮影とは違い、ブレが軽減されたために、結構シャープです。やはり、いつもの勝手知ったるフィールドばかりでなく、ときには異なった環境を訪れてみるのも大切なことなのを再確認しました。


タイワンハネナガイナゴ
NikonD200 Insecteye-LensIVba Speedlight


ヨウテイボク
Ricoh Caplio R3 Speedlight
2006.2.15

 ときどき立ち寄る公園の片隅に、ヨウテイボクの花が固まって咲いているのに気付きました。どれも新鮮な状態で、これから咲こうとする蕾もたくさん見られました。ここ数日の陽気で、一気に開花したのでしょうか?
 気温も上昇し、何処か縮こまっていた体の緊張も解けたような開放感があります。いよいよ昆虫の活動シーズンがそこまでやってきた喜びに浸っていると、もっと現実的な感覚に気付きました。カメラを持つ手には数匹の蚊がとまっています。しばらく忘れていた感覚です。そうです、こんな昆虫もいたのでした。

2006.2.14

 今日は朝から快晴です。早速、昨日の復活戦へと出掛けました。春そのもののような陽気に、ミツバチの姿も昨日の数倍います。これは、数打ちゃ当たる戦法には、実に好ましい状況です。
 花にとまったミツバチを見つけては、レンズ先端1cmくらいまで肉薄して、飛び立つ瞬間を狙います。しかし、昨日よりは数段よいとはいえ、プレビュー画面の中のミツバチは小さすぎるか、ピントが外れています。
 そろそろ諦めようとしたときに、目の前を飛ぶ1匹のミツバチをレンズで追い、ほとんど反射的にシャッターを切っていました。すると、これまでで最も大きくシャープに写っているではありませんか!ダメもとで撮った1カットのほうが、出来がよいとは何とも皮肉な結果です。オマケに背景に金網が写っているのも運が足りなかったようです。でも、これで虫の眼レンズによる飛翔撮影の可能性が確かめられました。次回は、もっと完璧な背景になることを祈りましょう。


セイヨウミツバチ
NikonD200 Insecteye-LensIVba Speedlight


アカタテハ
NikonD200 Insecteye-Lens IVba Speedlight
2006.2.13

 今日も薄日が射したり、陰ったりのはっきりしない一日でした。しかし寒さも和らぎ、いくらか虫の姿も目にとまる状況だったので、虫の眼レンズによるミツバチの飛翔カットを撮影してみました。
 しかし、その結果は惨憺たるもの。虫の眼レンズは、極めて遠近感が強いため、レンズから少しでも被写体が離れると、急に小さくなってしまうのです。ですから、レンズの目の前で飛んで貰わないとならないのですが、そのときの被写界深度は、これまたかなり浅いのです。
 ところが、失敗したカットの山を見ながら、あることに気付きました。白い部分にハレーションが目立ち、部分的に変な色カブリが見られるのです。調べてみると、レンズの前玉にベッタリと指紋が付いていました。もし、今日の撮影結果が上々であったら、この指紋の影響をどれだけか嘆いたことでしょう。指紋の影響に気付いてからは、今日の失敗作例の山も仕方ないかと納得してしまったのが不思議です。

2006.2.12

 久しぶりの好天に、カメラ片手にフィールドに飛び出したのですが、どうも気持ちばかりが空回りして、それ程昆虫の姿は多くありません。低温の期間が長く続いた後の晴れ間だからと言って、急に虫の姿が多くなるものでもないでしょうから、まぁ仕方ないと言えば仕方ないですね。
 そろそろ引き上げようかと思ったときに出逢ったのがこのユウマダラエダシャク。奇麗な鱗粉の並びは、羽化直後であることを物語っています。シーズンになれば、度々目にする姿なので、改めてレンズを向ける事はあまりありませんが、虫の姿の少ないこの時期、羽化したてのことも手伝って、とても新鮮なものに映りました。


ユウマダラエダシャク
Ricoh GR Digital


オキナワサルトリイバラ
Ricoh GR Digital
2006.2.12

 今日は久しぶりに晴れ間が覗き、寒さも和らぎました。もちろん、待ちに待った好天ですから、狙いは昆虫の姿です。しかし、今日最も印象的だったのが、意外にもこのオキナワサルトリイバラの花なのです。
 これまでも何度となく、新春の山の中でオキナワサルトリイバラの花を見てきたのですが、それらはどうも花の盛りをやや過ぎていたようです。今日見たものこそが、ちょうど旬の状態のようです。出来れば、青空バックで撮影したかったのですが、残念ながら快晴とまではいかなかったところに、もどかしさを感じました。

2006.2.11

 被写体に相応しい昆虫がなかなか見当たらないと、撮影対象は次第に小さなものになっていきます。すると、撮影倍率が上がり、解像度は落ち、被写界深度は浅くなり、ワーキングディスタンスは短くなり、ライティングも難しくなります。要するに、せっかく造り上げた虫の眼レンズの性能も、最大限発揮出来ない状況なのです。
 今日もそろそろ諦めて帰ろうかと思ったときに、この比較的大型なウスカワマイマイを見つけました。数枚シャッターを押してプレビューしてみると、光はよく回っていますし、なかなかシャープなんですね。やはりある程度以上の大きさの被写体になると、結果も上々です。大きな昆虫がたくさん出現してくる春が待ち遠しい限りです。


ウスカワマイマイ
NikonD200 Insecteye-Lens IVba Speedlight


チブサトゲグモ
NikonD200 Insecteye-LensIVba Speedlight
2006.2.11

 今日も暑くたれ込めた雲からときどき雨が落ちてくるような天気でした。相変わらず、被写体探しには苦労させられます。
 薄暗くなった夕暮れ時にレンズを向けたのが、このチブサトゲグモ。体色と模様に変異の激しいのが特徴ですが、この個体は暗闇に浮かぶドクロのように見えました。クモのなかまには、ゲホウグモという種類がいますが、このゲホウというのは妖術で使われるドクロのことなのだそうです。このチブサトゲグモはゲホウグモに擬態したかったのでしょうか?そんなことはありえませんよね・・・

2006.2.10

 昆虫の姿になかなか出逢えない中、沢山のアリの群がっている植物がありました。アブラムシの排出した甘露を舐めにきているアリの姿です。
 ところが、最初見つけたときは、それがアリには見えませんでした。明るい黄緑色の葉の上に、点々と散らばる胡麻粒のようで、ほとんど動かないのです。普通、アリのイメージと言えば忙しなく動き回っているものですから、ちょっと不思議な光景でした。
 これは、寒さのために動きが鈍っているのか、あるいは一心不乱に餌を舐めているからなのか判断が付き兼ねます。前者の理由ならば、わざわざ巣外で活動することもないだろうにと考えてしまいます。しかし、ストロボを至近距離で発光させながら撮影を続けるうちに、次第に動きが活発になってきましたから、確かに低温による影響もあったのでしょう。


アシジロヒラフシアリ
Ricoh Caplio R3 Speedlight


カエンカズラ
Ricoh Caplio R3
2006.2.10

 今日も寒い曇りの一日でした。こういう日は、寒い中で虫の姿を探し回っても、目的を達することがなかなか出来ません。そんな空しい想いとは裏腹に、この季節、鮮やかに存在感を主張しているのは、カエンカズラのオレンジ色です。
 例年ですと、時を同じくしてカンヒザクラの紅色と競演しているのですが、今年のカンヒザクラは2週間も早い開花で、既に葉桜へと姿を変えつつあります。それに対してこのカエンカズラは例年どおりの開花で、まだまだ新鮮な蕾がたくさん着いています。今年は、冬の晴れ間に楽しめる、オレンジ色と紅色と青色のコントラストのバランスがちょっと物足りないまま終わろうとしています。

2006.2.9

 今日は、曇り空の寒い一日に逆戻りでした。こういう日には、南島漂流記の被写体探しにも困ります。いろいろな画像掲示板を見ていると、温帯の冬のほうが昆虫の姿は多いのではないかと思う程、見当たりません。南国の虫は、寒がりなのかもしれませんね。
 4日前にダンダラテントウのバリエーションを撮影した場所を訪ねてみました。あれだけたくさんの姿を見たのですから、1匹くらいはいるかもしれないという目論みです。しかし、動けない蛹は目に付くものの、成虫の姿は皆無です。一体何処に隠れているのでしょう。
 同じ場所を何度行ったり来たりしたでしょう。やっと1匹のダンダラテントウがコバノランタナの花影の隙間に潜っているのを見つけました。しかし、頭部だけ隠したまま身動きひとつしません。正しく、頭隠して尻隠さずの状態ですが、こんな姿勢で何か意味はあるのでしょうか?


ダンダラテントウ
Ricoh GR Digital


イソヒヨドリ雄
Ricoh Caplio R3
2006.2.8

 いつもの撮影散歩コースの琉球大学のデイゴの木の根元では、2羽のイソヒヨドリの雄が、じっと何かを待っている様子でした。すぐ近くの歩道を盛んに人が行き来するのですが、ほとんど気にする素振りもありません。
 餌を狙っているにしては、余りに動きません。あるいは、そろそろ恋の季節で、雌の姿を追い求めていたのかもしれません。今日も冷たい北風が吹き荒れていましたが、少しずつ春が近づいているのかもしれませんね。

2006.2.7

 昨日、鳥に捕食されたと思っていたナガマルコガネグモの幼体を、再び確認出来たことを報告しました。しかし、今日訪れてみると、またいないのです。今回は、網もすっかり見当たりません。
 今回は、この状況からして、どうやら網を畳んで他の場所に移動したようです。一昨日の不在は、新居の下見だったのでしょうか?成長とともに、網を張る空間が手狭になり、新たな空間を求めて移動したのならよいのですが。そうではなく、連日の至近距離まで接近しての撮影を嫌ってのものだったら・・・
(写真は、一昨日写した網だけの状態)


ナガマルコガネグモの網
Ricoh GR Digital


アシビロヘリカメムシ
NikonD200 Insecteye-LensIVba Speedlight
2006.2.6

 今日は、虫の眼レンズの解像度にちょっとした向上が感じられました。と言っても、何も機材には手を加えていません。実は、このところレンズ自体が当初よりもかなり軽量コンパクト化出来たために、安易に手持ち撮影していたのです。まぁ、それが出来るだけ機材が進化したとも言えますが。
 それが、今日の午前中は久しぶりの快晴。いつもより2段分早いシャッターが切れました。その結果、いつもより明らかにシャープネスが向上しています。つまり、これまではブレによって、解像度が低下していたのですね。実に基本的な部分の見落としでした。しかし、今日も風の影響はあったので、まだまだこれがこの光学系の実力ではないと思います。

2006.2.6

 このところ、虫の眼レンズやズーム改造マクロレンズなど、冬場は撮影よりも機材改造に時間を割く毎日です。しかし、改造機材のテスト撮影となれば、それに相応しい被写体も欲しいものです。とは言え、一般的な昆虫たちは、気温や風次第で姿を隠してしまいます。そのようなとき、いつもテスト撮影に付き合ってくれたのが、このナガマルコガネグモの幼体です。雨の日も強風の日も、同じ場所に網を張り、待っていてくれました。
 ところが、昨日こつ然と姿を消してしまったのです。網だけを残して。きっと鳥に食べられてしまったのだろうと、主のいない網だけを撮影して帰ってきました。そのことを報告しようと思っていたのですが、今日再び訪れてみると、網の中央に懐かしい姿が見られ、ほっとしました。天気にも恵まれた今日の姿はなかなか頼もしく映りました。それは、最初に見つけたときの体長は5mm程だったのが、その倍近くに成長したこともあるのでしょう。


ナガマルコガネグモ
NikonD200 Insecteye-LensIVba Speedlight


ダンダラテントウ
NikonD200 OriginalZoomMacroLensN281 Speedlight
2006.2.5

 今日は曇り空ながら北風は弱く、それ程寒くはありませんでした。虫達も姿は見せるものの、あまり活動的ではないといった様子でした。
 そこで、沖縄で最もポピュラーなテントウムシ、ダンダラテントウを撮影してみました。同じ種類でありながら、これだけの変異が見られます。テントウムシの個体変異というと、本土のナミテントウが有名で、各タイプ出現の遺伝的仕組みも解明されています。しかし、このダンダラテントウの場合、地色のオレンジ色と黒の帯の部分の広さの連続的な変異のように見えます。
 生態学的な、あるいは進化論的な解説は可能でしょうが、何故これだけの変異個体が同じ場所に出現する必要があるのか、不思議に思います。私たちの目を楽しませてくれるためでしょうか?

2006.2.5

 このところ、すっかり虫の眼レンズの製作、改良、テストにハマっていますが、決して、この虫の眼レンズで撮影すること自体が最終目的ではないのです。飽くまでも、これも1本の交換レンズであり、表現方法のひとつの選択肢でしかないのです。
 最終的なライフワークのテーマになるか否かは未だ判りませんが、今抱いている最も大きなテーマは、「熱帯でも温帯でもない亜熱帯のオリジナリティを映像で表現する」ことです。その亜熱帯のフィールドを歩けば、ありとあらゆる、ときには予測し得ない被写体に出遭います。そして、そのときどきで、その被写体である生物の特徴を最も際立たせた映像を如何に得るかをくふうします。
 ときには、その生物の生息環境までも判るように虫の眼レンズで撮影してみたり、あるいはその生物の姿の面白さだけを強調するために、クロースアップにより背景を単純化してみたりと。さて、今日の場合はどちらが正解なのでしょうか?


ホシスジオニグモ
NikonD200 Insecteye-LensIVba Speedlight

NikonD200 OriginalZoomMacroLensN281 Speedlight


トガリシロスジグモ
NikonD200 Insecteye-LensIVbaa Speedlight
2006.2.4

 立春の沖縄は、晴れ間が覗くかと思えば、本降りに近い雨が落ちてきたりと、不安定な天候でした。
 今日の虫の眼レンズは、メンレンズと拡大レンズの間にフィールドレンズという凸レンズを1枚挟んでみました。その結果は、色収差が増したようで、さらに焦点移動も感じられ、今ひとつのようです。以前の今より大型のメインレンズを使っていたときは、結構よい結果が得られたので試してみたのですが、レンズの組合わせの相性はなかなか複雑な世界です。

2006.2.3

 昼頃までは晴れ間が広がっていたのですが、午後から曇り、夕方には雨になってしまいました。最近は、虫の眼レンズの改造に精を出していますが、どちらかというと、外の天気が悪いほうが作業には集中出来ます。しかし、ひとつのモデルが完成すると、今度はよい天気の下でテスト撮影をしたくなります。しかし、なかなか巧くいかないもので、希望とは逆の条件になることも度々です。
 業務用ビデオ版正像虫の眼レンズの実力を試したいのですが、時間的にどうもタイミングが合いません。今日も雨が本格化してから、やっとスチル用の虫の眼レンズを外に外に持ち出した始末です。雨に加えて薄暗い条件では、なかなか被写体も見つかりません。雨脚が強くなってきたので、そろそろ諦めて引き返そうかと思ったところ、アスファルトの上を歩く1匹のカタツムリに出遭いました。天気の悪いことを嘆いている人間とは違って、彼らは、散歩日和だとばかりに楽しんでいるのかもしれませんね。


夕暮れの散歩
NikonD200 Insecteye LensIVba Speedlight


2/3インチビデオ用正像虫の眼レンズ
Ricoh Caplio R3
2006.2.2 

 先日、一応完成した1/3インチビデオ用正像虫の眼レンズを、2/3インチ業務用ビデオ用に組立ててみました。
 取りあえず手許にあったパーツで像を結ぶようにしたため、まだ無駄なパーツが多く、元々ビデオに装着してあるレンズも含めて、全長60cm重量3kgにもなってしまいました。
 重量はワイコンやテレコンを装着したときと大差ないのですが、この長さはビューファインダーを覗きながらのピント合わせにちょっと苦労を伴うサイズです。
 重量に関しては、現在発注しているパーツが納品されれば、500g程度軽量化出来る見込みですが、全長は新たなる試みが巧くいくか否かに掛かっています。

2006.2.1

 今日は雨こそ上がりましたが北風が吹き荒れる一日でした。ここ数日集中して取り組んでいたビデオの編集作業が終わったので、発送を済ませた後、タイカレーを食べに行きました。これまで気付かなかったのですが、店内の片隅に大理石で出来たタージ・マハルのレプリカが置いてあるのに目が留まりました。
 これを目にした瞬間、とても懐かしい思い出が蘇りました。私自身はインドに行ったことはありません。私が小学校低学年のときに父が初めて海外旅行に行った先がインドで、お土産にこれとそっくりの置物を貰ったのです。もっとも、大きさはこれの4分の1くらいで一辺が15cm程だったと思います。これもまた同じように、中に豆電球を入れて照明していました。
 しばし、子どもの頃の記憶を辿っていたのですが、ふと「何でタイカレーの店にインドの置物なんだ?」と思った途端、現実の世界に引き戻されました。


タージ・マハル
Ricoh GR Digital

>戻る