南島漂流記
2004年10月前
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2004.10.12

 今日は、やっとフタスジハリカメムシの成虫の撮影が叶いました。よく探してみると、それ程個体数は少なくないことはないのですが。ひとつは神経質なのと、このところの強風続きの影響か、余りハリツルマサキの茂みの外側には出てこず、見え難いところに留まっているため、なかなか撮影出来ない状況のようです。
 ところで、目にする成虫のほとんどが、交尾ペアを形成していて、単独のもののほうが少ないくらいです。カメムシの仲間は、雌に他の雄と交尾をさせないために長時間交尾戦略を採る雄の種類が多いのですが、このフタスジハリカメムシもそうなかもしれません。しかし、同時に卵塊も多く見つかりますから、何処かで単独の雌が産卵をしているはずです。しかし、さらに探してみましたが、残念ながら、産卵シーンには出会えませんでした。これも強風の影響なのでしょうか?


フタスジハリカメムシ交尾ペア
Ricoh Caplio GX Speedlight


フタスジハリカメムシの卵塊
Ricoh Caplio GX
2004.10.11

 昨日紹介したハリツルマサキの植え込みで、フタスジハリカメムシを探してみました。
 成虫の姿も確かに見かけたのですが、数が少ない上に、すぐに茂みに潜ってしまうので、残念ながらまともな画像を収めることが出来ませんでした。このところ続いている強風の影響かもしれません。
 成虫の代わりにたくさん見つけたのが、ハリツルマサキの葉の裏表に産み付けられている卵塊です。ハリツルマサキの葉自体が小さなものですから、卵塊もよく探さないと見つかりません。ところが、何時の間にこれ程の卵が産まれたのかと驚く程の数が見つかりました。気付かないうちに季節は進んでいたよう、、、と書きながら感じたのですが、今年は例年よりもフタスジハリカメムシの繁殖の時期が早いようです。このような光景が見られるのは、例年だと11月以降だったのではないでしょうか?ということは、昨日紹介したハリツルマサキの実も早く熟したようです。度重なる台風の襲来に季節感も麻痺してしまったのでしょうか。

2004.10.10

 沖縄ではマッコーの方言名で知られるハリツルマサキ。植え込みなどに使われますが、いつもは艶のある緑の葉ばかりで、地味な印象です。そのハリツルマサキが存在感を放つのが、これからの季節です。これまた目立たない白い小さな花の後に着く、紅色の実の塊。秋の彩りという季節感に乏しい亜熱帯の沖縄では、数少ない貴重な植物と言えます。
 主に昆虫を相手の仕事をしている身にとって、ハリツルマサキの実はそのものよりも、フタスジハリカメムシという昆虫との関係のほうが印象にあります。オレンジ色と濃紺の組み合せの体色のカメムシが、この紅色の実に群れるのです。亜熱帯とは言え、次第に生き物たちの姿の寂しくなっていく秋から冬に、鮮やかな色彩を楽しませてくれます。残念ながら、今日は時間に余裕がなく、フタスジハリカメムシの姿を探すことが出来ませんでしたが、また日を改めて出直したいと思います。



ハリツルマサキの花(上)と実(下)
Ricoh Caplio GX Speedlight



タイワンモクゲンジの花(上)と実(下)
NikonD70 VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED PL-Filter
2004.10.7

 やはり日頃の行いでしょうか、曇ってしまいました。またまた台風が接近している影響なのですが。それでも、昨日の目的を果たすため、タイワンモクゲンジの実をアップで撮影してみました。
 街路樹に着いている実を車を運転しながら見ていると、円盤状の物が幾重にも重なってみえたのですが、もっと立体的なパーツが房状に着いているのが意外でした。また、花も同時に着いていて、これは小さな黄色い集合でした。昨日の写真もよく見ると、この花が写っていますね。これまでにも、幾度となく経験したことですが、植物の花や実の構造というものは、遠くから見るのと、近くでじっくり観察するのでは、まるで違うことが多いものです。このタイワンモクゲンジも、見事に遠目からのイメージを裏切ってくれました。そこがまた面白いのですけどね。
 そして、また意外だったのが、和名の由来。「モクゲンジ」は「源氏」とは関係なく、「木患子」と書くのだそうです。この植物は、ムクロジ科に属します。そのムクロジの漢名が「木患子」でその音が「モクゲンジ」という訳です。さらに、沖縄に残されているのは頼朝伝説で、沖縄本島の本部半島の今帰仁に上陸して、そこで一子をもうけて、伊豆大島に戻っていったというものでした。

2004.10.6

 以前から気になっていた樹木の名前がやっと判りました。タイワンモクゲンジだそうです。「台湾」と「源氏」の組み合わせとは、かなりミスマッチな印象です。沖縄にも頼朝伝説か義経伝説があったような気もしますが・・・。元々、モクゲンジという種類があって、それに近縁な台湾原産種なので、このようなネーミングになったようですね。
 今日の沖縄本島は快晴でしたが、これまでの夏陽射しとは異なり、急に秋の陽射しに変わったような気がします。そのコントラストのはっきりした光線の中で、このタイワンモクゲンジの実が急に目に付くようになったのです。桃色とエンジ色の中間のような、そしてちょっとドライフラワーのような、不思議な質感です。しかし、この色彩は順光でないと、このように映えないのです。建物が入らないようにと、角度を変えると、急にくすんでみえるのです。
 しかも、手許には85mm相当までのズームレンズのコンパクトカメラのみ。仕方なくデジタルズームまで使ってしまったのですが、これが精一杯・・・。明日は、望遠ズームを着けた一眼レフを持って、アップで撮影してみようと思います。明日も快晴ですように!


タイワンモクゲンジ
Ricoh Caplio GX


クロヨナの花
Ricoh Caplio GX
2004.10.4

 クロヨナの花が急に目に付くようになりました。黄緑色の葉の中に房状に咲くピンク色のマメ科の花は、なかなかの美しさです。花期は5〜10月と長いのですが、今頃の季節がピークのようです。
 クロヨナというと、オキナワビロードセセリの食草のイメージがあります。但し、幼虫は若い柔らかい新芽しか食べないので、春先と台風通過後の芽吹きのときに、産卵が行われると言います。つまり、夏以降の新成虫の出現は、台風次第ということにもなります。頻繁に台風に見舞われる沖縄の気象条件に対する、ひとつの適応なのかもしれません。
 長い花期を持つ植物が、どのような要因で実際に花を着けるのか不思議ですが、このクロヨナの場合は、台風の影響も受けているのでしょうか?もしそうだとすると、今年のような台風の当り年には、どのタイミングで花を着けるか迷ってしまいそうですね。

2004.10.2

 昨日に続いて、ランタナで吸蜜するホウジャクの仲間です。前日撮影した写真を見ていて、複数の種類が混ざっていたのに驚きましたが、今日のホウジャクは、明らかに他とは異なる種なのが判りました。小型で明るい体色なので、薄暗い中を俊敏に飛び回っていても、特徴的に感じられました。
 しかし、手許の図鑑で調べて見ると、やはり確証を待てる種が見当たりません。ちょっとがっかりすると共に、20年程前に、沖縄の昆虫図鑑を作ることになって、そのメンバーとの間で熱い議論を交わしたことを思い出しました。掲載する写真を標本写真にするか生態写真にするかが論点でした。あるメンバーは、標本写真を推すのですが、私は生態写真派でした。その理由は、子供を中心とした一般向けの図鑑では、特にチョウやガでは、展翅された標本の姿と実際に生きているときの姿は異なり、却って判り難いためです。
 今でも、その考えに変わりはありませんが、今回のような場合には、「標本写真もあればなぁ?」と思います。両者併用が理想的なのでしょうね。本格的な蛾類図鑑でじっくり種名を調べたいところなのですが、既に締切りを過ぎようとしている原稿製作に追われる毎日なので、そうもいきません。何方か、蛾に詳しい方、こんな写真でもお判りになりますか?


ホウジャクの一種
NikonD70 Sigma105/2.8Macro X1.4Telecon Speedlight




ランタナで吸蜜するホウジャクたち
NikonD70 Sigma105/2.8Macro X1.4Telecon Speedlight
2004.10.1

 琉球大学の入口のひとつの脇にランタナの植え込みがあり、夕方になると、ホウジャクの仲間が盛んに訪れて吸蜜を繰り返します。
 空中でホバリングしながらの吸蜜行動で、最も撮影しやすい飛翔シーンとも言えます。このような特異な吸蜜行動が発達したのは、花で待ち伏せるアズチグモなど捕食者への対抗戦略なのでしょうか。
 ホバリング(空中静止飛行)をするには、翅(はね)を8の字状に運動させる必要があるようですが、そのためかホウジャク類の飛翔時の翅はなかなか鮮明には写し止められません。何とか、翅の模様が判るものは、最も羽ばたきの速度の落ちる、一番上に振り上げたときか、その反対の打下ろしたときのようです。その中間の位置では、通常のストロボの閃光速度では、ブレてしまいます。
 躍動感があってよいと言えばそれまでですが、この翅の斑紋が鮮明に見えないと、何種類も訪れるホウジャクの種名が判別出来ないので困ってしまうのです。

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