南島漂流記
2004年8月後
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2004.8.30

 今日も強風の合間に昆虫の飛翔の撮影に挑戦。小一時間に70枚程撮影しましたが、何とか見られるのが、この1枚だけ・・・。まだ、先は長いようです。
 このような撮影も一眼レフを使えば、歩留まりも数倍高くなるのですが、そこをこのコンパクトデジカメで撮影するところが面白いのです。しかし、趣味だけの撮影ならばそれでもよいのですが、仕事として考えると、それでよいのか悩むところです。もっとも、他のコンパクトデジカメに比べれば、これでも数倍以上歩留まりが高いのですから、何とも悩ましい存在です。
 しかし、こういう考え方も成立ちます。重い一眼レフをいつも持ち歩くのは、現実的ではありませんが、このコンパクトデジカメは本当に常時持ち歩いています。ここらに、このカメラの本当の生息場所がありそうです。一眼レフとの巧い使い分けが出来てこそ、より存在価値が出て来るのだと思います。そう割り切るためには、一眼レフに負けない飛翔のカットを早く1枚ものにしたいのですが・・・


飛び立ったセイヨウミツバチ
Ricoh Caplio GX Wide-Converter Speedlight


訪花したナミエシロチョウ雌
Ricoh Caplio GX
2004.8.29

 台風の影響で風は強く、厚い雲に覆われていますが、夕方からときどき陽が射すようになってきました。今年の夏もいろいろなものを撮影してきましたが、どうも消化不良なものがあります。糸崎公朗さんの掲示板で、チョウなど昆虫の飛翔写真を投稿するのが流行ったのですが、私は結局これといった写真をものに出来ずにきました。
 最大の理由は、まず反射神経がよくないので、歩留まりが非常に悪いのと、次に根気がないことでしょう。現在は、ビデオ撮影が仕事のメインの状態で、効率の悪い飛翔の撮影にまとまった時間がなかなかさけません。それでも気がつけばあっと言う間に1時間くらいが過ぎてしまうのですが、撮影済みの画像をチェックしてみると、ほとんど即消去対象なのです。
 その中で、最もまともな画像がこれでしょうか?撮影は花をポイントに絞るのが効率的ですが、そこから飛び立つ瞬間よりも、とまろうとする瞬間のほうが難易度は上です。一方、投稿される写真にはとても小型のシジミチョウのカットも多いのですが、このナミエシロチョウはその何倍も大型ですから、その点ではマイナスポイントでしょう。このカットもあと、コンマ0何秒遅れてシャッターを押していたら、なかなかだったと思うのですが、投稿するにはイマイチです。まぁ、このような撮影はテクニックと経験が半分、運と粘りが半分といったところですから、もう少し頑張ってみましょう。残り2日間で、出来上がってない夏休の宿題のような感じです。

2004.8.27

 またまた大型の台風が近付いていますが、進路予想図では直撃コースからは逸れたようです。当初のコースを進むとちょうど旧盆の頃に、沖縄本島直撃の可能性があったため、ひと安心と言ったところです。
 それでも風の強まる中、何か被写体はいないかと探してみると、風のやや遮られている茂みの照明の近くにキイロヒトリモドキが飛来しているのを見つけました。八重山地方では、ガやチョウは他界からの使者という考えがあり、その代表種がこの蛾だと聞いたことがあります。ガジュマルなどを食樹としていて、その薄暗い根元の茂みなどにじっととまっていると、そんな気がしないでもありません。
 明日は旧盆の迎え火を焚く日。一足早く背後の迎え火(?)にやって来た使者なのかもしれません。


キイロヒトリモドキ
Ricoh Caplio GX Speedlight


セスジツユムシ雄成虫
Ricoh Caplio GX
2004.8.25

 どうも与那国島の後、気持ちがすっかり夏休になってしまったようです。そもそもこの「南島漂流記」自体が、小学校の頃の夏休の絵日記のようなノリで、度々サボったり、日付けを遡って書いてみたりと・・・そして、夏休後半の、残り少ない休みの日数を頭の片隅にそれから逃げて遊んでいる後ろめたさ・・・何歳になっても性格は変わらないもののようです・・・
 さて、業務日誌の更新されない言い訳のもうひとつに、立続けに台風がやって来て風が収まらず、小さい昆虫の撮影が難しいという現実もあります。本当に今年は台風の当り年です。まだ、これからが台風シーズンだというのに、もう既に18号ですから。
 今頃からの季節は、台風がひとつ去る毎に秋を感じるようになりますが、キリギリスやコオロギなどの所謂「秋の鳴く虫」が増えてきたように思います。亜熱帯沖縄では、真冬も含めて何かしら一年中虫が鳴いているのですが、やはりこれから秋にかけての季節が最も顔ぶれの豊富になるときです。沖縄の鳴く虫の代表はこのセスジツユムシでしょう。有り触れた種なのですが、スレンダーな体型といい、その色彩や質感、結構好きなタイプです。

2004.8.22

 いよいよ与那国島を去る日がやってきました。台風17号が接近していて、それに追われるような出発です。今年は、最大の目的の夏のヨナグニサンの出現が例年よりも遅かったため、思ったような成果は得られませんでした。もう少し、島に滞在してこれから先の発生状況を見てみたいのは山々なのですが、いろいろな予定を考えるとそうもいきません。接近している台風によって、やっと発生の始まったヨナグニサンに影響が出ないのを祈るばかりです。
 さて、昨日は与那国島で幸せそうな暮らしをする牛を紹介しましたが、今日はヨナグニウマです。与那国島固有の小型の在来馬で、以前は農耕に使われていたそうです。しかし、農業の機械化に伴って次第に数が減り、一時期は純潔なヨナグニウマは絶滅が心配された時期ものです。しかし、その後、島の東端にある牧場に集めて繁殖が試みられ、今では危機を脱したそうです。
 さらに、その牧場の規模を超える頭数になったため、現在では牧場外でも飼育されています。今回の夜のヨナグニサン探しで、驚かされることがときどきありました。暗闇にヨナグニウマが繋がれていることがあるのです。餌である草が生えている場所に、毎日繋ぎ変えられるので、思い掛けない所で出会います。こちらは、ビックリするのですが、馬のほうは結構人懐っこい性格のものが多く、あちらから近付いてきて、私は体のあちらこちらをベロベロ舐められたり、齧られたりしました。


ヨナグニウマ
Ricoh Caplio GX


与那国島の牛たち
Ricoh Caplio GX
2004.8.21

 以前から与那国島を訪れる度に思っていたことなのですが、牧場に放たれている牛や馬たちが、実にのんびりと暮らしていて、いい感じなのです。こんな姿を見ていると、もし来世が牛か馬だったら、与那国島に生まれたいな〜と、思ってしまうほどです。
 牛や馬たちは、何時もどおりのんびりとした生活でしたが、今夏の与那国島の人間の生活は例年とはやや違ったようです。ある孤島の医師の活躍を描いた民放ドラマのロケで、島中に撮影スタッフが溢れていたことです。度々、撮影のために通行止めになったり、有線放送でエキストラ募集の呼び掛けがあったり、そして一番困ったのが、島中の宿泊施設がほとんどスタッフに占領されていたことです。私も出発する当日の朝まで宿が決められない始末でした。実際は、部屋に空きがあっても、不測の事態に備えて多めに押さえてあるそうで、部外者には回ってきません。しかも、今回のロケは、ちょうど夏休期間と同じ日程で組まれています。一般の観光客は、宿が取れずにかなり困っている様子でした。このドラマによって与那国島が知られるのはよいことかもしれませんが、もう少し島の生活の規模を考えたロケにして欲しいものです・・・

2004.8.19

 やっとヨナグニサンの成虫が出始めたようです。与那国島の最高峰の宇良部岳で、昨夜1頭、今夜2頭の比較的新鮮な雄成虫に出会いました。新鮮な雌にはまだ出会ってませんから、夏世代の出現がちょうど始まったようです。
 昨年に比べると、ほぼ10日遅れの状態でしょうか。昨年は、雄成虫の出現のピークに当たり、最後の晩にやっと1頭の新鮮な雌を見掛けました。そのために、交尾や産卵などの行動は撮影出来ませんでした。そこで、今年は1週間遅く来てみたのですが、ヨナグニサンに裏をかかれてしまいました・・・
 立続けに接近した台風による降雨のため、森に潤いが戻ったのが、羽化の引き金になったのでしょうか?そう言えば、去年の今頃はそれこそウジャウジャ見られたオオゴマダラの姿も、昨日、今日と見かけるようになってきました。やっと島の昆虫がその気になってきたのは嬉しいのですが、私のほうが本島に帰る日が迫ってきてしまいました・・・


羽化間もないヨナグニサンの雄
NikonD1X Sigma18-125/3.5-5.6 Speedlight


ミヤコキンカメムシのペア
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight
2004.8.18

 なかなか思うようなヨナグニサンに出会えない状況ですが、代わりによく見かけるのが、ヤシガニとこのミヤコキンカメムシです。
 沖縄本島地方でも見られるナナホシキンカメムシによく似ていますが、小型で腹部のオレンジ色が目立ちます。これまでにも、与那国島は何度となく訪れていますが、これ程たくさんのミヤコキンカメムシを見るのは初めてのことです。ヨナグニサンやオオゴマダラの発生には不利に働いている乾燥状態が、ミヤコキンカメムシには逆に適しているのでしょうか?あるいは、目当てのヨナグニサンが少ないため、他の昆虫にも目がいくからなのでしょうか?
 ところで、このミヤコキンカメムシ、単独でいるものよりも交尾ペアのほうが多いように感じます。ギフチョウなどでは、他の雄と交尾しないように、交尾時に雌の生殖器に栓をしてしまいます。カメムシの場合は受精後も長時間、交尾状態にあって、雄自身が交尾栓と化している種が知られていますが、このミヤコキンカメムシもそのような戦略なのでしょうか?近縁のナナホシキンカメムシでは見られない行動です。

2004.8.17

 なかなか目当てのヨナグニサンの姿に出会うことが叶いませんが、今日の夕方、一組の雌雄に出会いました。台風の接近に伴う強風の中、そろそろ宿に戻ろとして、ふとハンドルを切って分け入った山道で遭遇したのが、この雌です。正確には、この約30cm下にいた雄成虫にまず気付いたのです。どちらも、翅を損傷しています。
 羽化後やや時間の経過した雄と雌のようですが、交尾をした直後なのでしょうか?それとも偶然に近くに居合わせただけなのでしょうか?どうも今夏の発生状況がつかめません。少雨による乾燥が発生の遅れている原因であれば、今回の台風による雨で羽化が促進されるのでしょうか?
 今日出会った雌雄で、今回目撃したヨナグニサンは3匹。それに対して、ヤシガニは7匹。逆であれば嬉しいのですが・・・


ヨナグニサン雌成虫
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED Speedlight


道路を横断するヤシガニ
Ricoh Caplio GX Speedlight
2004.8.16

昨日から、日本最西端の島、与那国島に来ています。今回の目的は、世界最大の蛾とも言われるヨナグニサンの撮影なのですが、発生状況は芳しくありません。一年に4回程成虫の出現のピークがありますが、その中でも例年8月の中頃が最大のものです。しかし、今年はほとんど姿が見られないそうです。地元の方の話では、春先は普通に発生したのだそうですが、それ以降はまとまった数が出ていないそうです。少なくとも、例年よりも発生が早まったということではないようですが・・・
 そう言えば、昨年の今頃は、島の至る所で、オオゴマダラの姿を見たのですが、全く見掛けません。一体、どうしてしまったのでしょう?春以降とても雨が少なく、乾燥した状態が続いているようですから、それが原因かもしれません。
 夜な夜なヨナグニサンの姿を求めて、島の中を移動していると、道路に出てきたヤシガニに遭遇します。目当てのヨナグニサンよりも遥かに数が多い状況です。しかし、このような光景が見られるのも与那国島ならではです。周囲24kmしかない小さな島では、山の奥でもしばしば遭遇します。
 昆虫の発生もイマイチですし、台風がまた接近しつつあります。残念ですが、予定を繰り上げて本島に戻ることも検討しなければなりません。

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