南島漂流記
2004年6月後
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2004.6.30

 今日は本部半島に行って来ました。ナナホシキンカメムシの集団とクロイワゼミを探すのが目的です。ナナホシキンカメムシのほうは、ちょうど新成虫が出現し、木の幹に大集団を造る時期なのですが、まだ早かったのか、小さな集団しか見つけられませんでした。
 一方、クロイワゼミのほうは、岩や木の根元に、かなりの数の羽化殻が見られますから、発生は順調なようです。しかし、この体長2cmちょっとの緑色のセミを見つけるのは、そう簡単なことではありません。目の前にいても、見落としてしまうことも少なくありません。
 それでも運良く、探し始めて30分足らずで、ちょうど羽化途中の雌を見つけました。まだ、大きく反り返っている状態をハイビジョンカメラで収録して貰うことが出来ました。その直後の証拠写真がこれなのです。
 ところで、山原(やんばる=沖縄本島北部)のセミで気になることがあります。ツクツクボウシの仲間のオオシマゼミが、今年は既に鳴いているのです。例年は8月に入ってから鳴き始める種類なのに、どうしたことでしょう?これと近縁のクロイワツクツクが、近年、沖縄本島中南部から姿を消してしまっているので、ちょっと気になる現象です。
※オオシマゼミは、地域によって5、6月に一時的に鳴く場合もあるようです。


羽化直後のクロイワゼミ雌
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight


食事中のヤンバルヤマナメクジ
Ricoh Caplio GX Speedlight
2004.6.29

 一昨日から、テレビの仕事で山原にいます。琉球朝日放送(QAB)の開局10周年特別番組の収録のためで、1週間の予定です。
 早朝に地上で活動するヤンバルクイナ、夜間樹上に登っているヤンバルクイナを狙って、睡眠不足の毎日です。今晩、夜のクイナ探しをしていて、無気味な、そして不思議な光景に出会いました。林道で轢かれていたアカマタという蛇の死骸に、1匹の大きなナメクジがいたのです。どう見ても、これは死骸を食べているようにしか見えません。
 ナメクジ、カタツムリというと、葉や落葉など植物質を餌にしているイメージがありますが、意外な光景です。これまでにも、動物の死骸にやって来たナメクジは見た記憶がありません。かなり珍しい行動なのでしょうか?それとも研究者の間では、よく知られた行動なのでしょうか?

2004.6.28

 梅雨や台風の襲来をくぐり抜け、夏本番と表現するのに相応しい夏空が広がっています。いろいろなセミの鳴き声も絶えまなく響き渡っていますが、それ以外でも、夏らしさを感じさせてくれる昆虫の姿に遭遇しました。
 渓流に洗われる岩場に、数百匹ものセイヨウミツバチが群れ飛んでいるのです。最初は何をしているの判りませんでしたが、近付いてみると、熱心に水を飲んでいます。これまでに何度か見た光景ですが、これはワーカー(働きバチ)自身の咽を潤すためではなく、巣を冷やすために、腹に水を溜めて、巣に運ぶ行動なのです。それにしても、これだけのミツバチがまとまって、作業を繰り返しているのは初めて見ました。
 近くの炎天下に、きっと大きな巣があって、そこでは運んだ水を口から吐き出して、巣の冷却行動をしているに違いありません。そう思い、ハチたちの飛んでいく方向を探したのですが、残念ながら巣を見つけることは出来ませんでした。


渓流で水を集めるセイヨウミツバチ
Richo Caplio GX Speedlight


アカギカメムシの成虫集団
Ricoh Caplio GX Wideconverter
2004.6.27

 今年は、昆虫と台風の当り年という話をしましたが、ひとつ気掛かりな昆虫がいたのです。
 それが、このアカギカメムシです。雌成虫が、卵塊や若齢幼虫の世話をしたり、成虫が何万匹もの集団を造ったりと、なかなか興味深い昆虫なのですが、ここ数年あまり数がまとまった状態で見たことありませんでした。いろいろな種類の昆虫が久しぶりにまとまって発生している今シーズン、アカギカメムシに期待していたのですが、これまでは、あまり見掛けませんでした。しかし、今日になってやっとアカメガシワの葉裏で、成虫が集団を造り始めているのに、数カ所で出会いました。これから次第に集団の規模が増していくことでしょう。これで、ひと安心です。
 一方で、今シーズンは絶望的な昆虫もいます。コノハチョウです。10年に一度くらいの頻度で、食草のひとつセイタカスズムシソウが枯死してしまうのです。コノハチョウの最大の生息地、本部半島ではほぼ全滅状態です。さらに北の国頭地域のオキナワスズムシソウのほうはいつもどおりの状態ですが、こちらは株も少なくあまり期待出来ません。今年はコノハチョウを新たに撮影する計画だったので、あまりのタイミングの悪さに困っています。

2004.6.25

 梅雨明け宣言の日から、まだこれぞ梅雨明けという空に出会ったなかったのですが、今日は文句なく初夏らしい天気の一日でした。
 夏を迎えた山原(やんばる=沖縄本島北部)の森で、特に今の季節を感じさせてくれるのが、この場所です。渓流沿いから切り立った斜面の樹木が、つる性植物に一面覆われています。亜熱帯を通り越して熱帯雨林、ジャングルという景観です。そして、その間からは巨大な木生シダ、ヒカゲヘゴが伸びています。この環境の雰囲気は、夏の正午前後の太陽がちょうど頭上にきた時間帯になると強い陰影が落ち、最高潮となります。
 ただ、この場所も夏になればいつでもこの景観が広がっているわけではありません。このつる性植物たちは、台風の潮風にはとても弱く、強い台風の襲来した後はしばらく枯れてしまいます。昨年から今年にかけては、まだ山原に大きな被害をもたらす台風が襲来してないのが幸いしているようです。


つる植物に覆われた亜熱帯林
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter


キジバトの若鳥
Ricoh Caplio GX
2004.6.24

 夕方に出掛けようと思い、事務所の駐車場に降りていくと、私の隣の車のルーフにキジバトが2羽とまっていました。あまり警戒する様子もなく、こちらを窺っています。たまたま手許に持っていたコンパクトデジカメで撮影してみました。最初は望遠で遠くから小さめに、徐々に近付きながら、大きく写していきますが、それでも一向に逃げようとする気配もありません。最後は広角で接近して撮影することも出来ました。
 そこまで接近して、撮影も一段落した時点で気付いたのですが、それまでペアだと思っていたのは、まだ幼い顔をした若鳥の兄弟(姉妹?)でした。まだ、巣立ち直後で警戒心が薄いのかもしれません。
 沖縄でのキジバトの繁殖は年1回ではなかったと思いますが、ちょうど梅雨も明け、野鳥達の繁殖シーズンも終わりの季節のようです。

2004.6.23

 沖縄地方の梅雨明けが宣言されました。例年よりも3日遅く、ちょうど沖縄戦が事実上、終結した「慰霊の日」に当たります。もっとも1週間以上も前から、既に初夏の陽射しが続いていたので、実際の梅雨明けは例年よりも早い印象です。しかし、19、20日には台風6号の接近があり、宣言も遅れたのでしょう。
 そして、梅雨明け宣言のされた今日は、朝こそ陽射しが眩しかったものの、午後からは雲が広がり、夕方には雨もパラつきました。カラっと晴れ上がった、典型的な梅雨明けの空とはいかないところが皮肉なものです。宣言をする担当者も、気苦労が絶えないかもしれませんね。
 今年の梅雨は、通常の降雨量は少なかったものの、台風4号による雨で長期に渡る渇水も脱したので、まぁ合格点でしょう。ところで、その後も先日の台風6号の接近、さらに次の7号も既に発生しています。今年は昆虫の当り年と書きましたが、もしかすると台風のほうも当り年になるかもしれませんねぇ。


梅雨明けの空(浦添市美術館から西海岸方向)
Ricoh Caplio GX WideConverter


サガラナオミさんと海藻おしばアートの作品
Ricoh Caplio GX WideConverter
2004.6.23

 浦添市美術館で今日から始まった、サガラナオミさんの海藻おしばアート展「サンゴ礁からの恵み」に行ってきました。
 サガラナオミさんとは、以前出演したFMなはの「田村邦子のマジカルミステリーツアー」というラジオ番組の出演者同窓会でお会いしました。そのときに、海藻おしばアートをなさっていると伺ったのですが、お話だけだと「へ〜!」「ふ〜ん?」という印象だったのです。
 ところが今日初めて、その作品を生で拝見する機会に恵まれたのですが、これが意外というか、不思議に面白いんですね〜!海藻(海草)というと、何処か地味な印象しかなかったのですが、緑や赤が鮮やかで、乾燥状態でもその微妙な透明感が美しいのです。そして、微細な構造を伴った質感は、陸上の苔やシダを思わせるところもあります。微妙な半透明感は、印刷物よりも実物で味わうべきものだと感じました。あるいは、ポジフィルムのようにバックからの透過光で鑑賞しても面白いかもしれません。
 サガラナオミ 海藻おしばアート展「サンゴ礁からの恵み」/2004.6.23(水)〜27(日)・9:30〜17:00(6/24は休館、6/25は〜19:00)/浦添市美術館第2企画展示室

2004.6.20

 台風6号が最接近していますが、事前の騒ぎの割には大したことはないようです。既に風雨も収まり始めています。
 それでもまだ、屋外に出て撮影ができる状況ではありません。一昨日入手したコンパクトデジカメ用のワイドアダプターのテスト撮影をしたいのですが、なかなか叶いません。仕方無しに、動物フィギュアをモデルに撮影をしてみました。
 こうしてみると、なかなか面白い写真が撮れそうな期待が高まります。もっとも、これは全く動かないフィギュアだからこそ、落ち着いてシャッターを切ることが出来た結果ですよね・・・また、現実のフィールドでは、蚊に刺されながら、汗をかきながら、悪戦苦闘して一枚ずつシャッターを切ることになるでしょう。もちろん、それでもよいですから、フィールドに早く出たいものです。


リュウキュウヤマガメのフィギュア
Ricoh Caplio GX WideAdapter


センニンソウ?の花
Ricoh Caplio GX WideAdapter
2004.6.19

 大型で非常に強い台風6号が沖縄に接近しています。規模といい、勢力といい、かなりの被害が予想されます。前回の台風で、ダムの貯水率は80パーセント代に戻っていますので、出来る事でしたら、あまり活躍して欲しくないものです。いつも水不足の解消を台風に頼っている沖縄では、都合のよいときだけに台風に頼ってしまうようです。
 既に、風がかなり強まってきていますが、昨日、コンパクトデジカメ用のワイドアダプターが入荷しました。広角側でも、元々28mm相当の画角なのですが、このアダプターを装着すると、さらに22.5mm相当になります。それでいて、レンズ直前の被写体にもピントが合うので、背景までピントの合った昆虫のなどの接写に期待が出来ます。
 生憎の強風の中、被写体探しをしたのですが、なかなか相応しいものはありません。オマケに常に風で揺れ続けているので困ります。何とか、風の収まった瞬間に、撮影したのが今日の写真です。花のひとつの直径は1cm足らずですから、この先面白い写真が撮れそうです。今回の台風の被害の少ないことを祈るばかりです。

2004.6.17

 子供の頃、昆虫図鑑を見ていて、興味を持ったのは、コノハムシのように精巧な擬態をしている種類でした。そして、大きな種類です。今、生活している沖縄には、コノハチョウのような精巧な擬態昆虫や、ヨナグニサンなどの大型昆虫も数多く生息していて、子供の頃の夢が叶えられました。
 沖縄には、擬態と大きさの両方を兼ね備えた昆虫もいます。例えばナナフシは、枝や茎に擬態していることで有名ですが、このエダナナフシは、前脚まで含めた全長が20cm近くになります。さらにアマミナナフシの雌は、同じく30cm近くにもなります。何度出会っても、ハッとする大きさです。
 ところで、昔の印刷の悪い標本写真中心の図鑑では、伝わってこない昆虫のもうひとつの魅力があります。それは鮮やかな色彩です。金属光沢や原色鮮やかな色も伝わってくれば、もっと沖縄や熱帯への憧れが強くなっていたかもしれません。


エダナナフシの一種
Ricoh Caplio GX

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