南島漂流記
2004年1月前
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2004.1.14

 昨日はかなり冷え込みましたが、今日は青空とともに暑い冬が戻ってきました。日中、車に乗っていても、渋滞に巻き込まれると、ついエアコンをONにしたくなります。
 住宅街を走る車窓から、急に目に付くようになってきたのがカエンカズラの花のオレンジ色です。まだ咲き始めばかりのようですが、いろいろなところで目にしますから、少し前から花や蕾が生長していたのでしょう。それなのに、昨日のような寒い曇りの日には気付かないのですから、不思議です。オレンジ色の花と補色の緑の葉による鮮やかなコントラスト、そして青空をバックにするとより映える植物ですから、そのためでしょうか?
 昨年も、このカエンカズラを紹介していますが、2月6日に満開になった状態です。今年は昨年よりもやや早いのでしょうか?昨年の写真もそうですが、この花は色彩といい大きさといい、遠くから眺めていても絵になるので、あまり近付いて見たことがありません。今日は咲き始めということもあり、車を停めて初めて間近に覗き込んでみました。


咲き始めたカエンカズラの花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6


ニセダイコンアブラムシ有翅虫
NikonD1X AI Nikkor28/2.8s Bellows Speedlight
2004.1.13

 昨夜から今日にかけて、今週のTVのためのビデオ編集をしました。その中に使う予定だったアブラムシ(アリマキ)の映像が、思っていたよりも風によるブレがひどかったので、急遽撮影しなおしました。運良く数日前、事務所の駐車場脇に数本生えているカラシナに、アブラムシが付いていたのを覚えていたのです。
 今日は急に寒くなり真冬の気温になったのですが、数日前に見つけたアブラムシは相変わらずでした。しかし風が強いので、このように小さな被写体の撮影は、屋外では到底無理です。仕方ないので、通常はなるべくしないように心掛けている、室内撮影をすることにしました。
 ビデオ撮影は短時間で終わり、編集も無事済みました。その後、もう一度アブラムシを観察してみると、午前中のビデオ撮影のときには見られなかった有翅虫も羽化しています。そこで、デジカメでも撮影してみることにしました。
 ベローズに広角28mmをリバースして装着し、ダブルレリーズでシャッターを切るという古典的な高倍率撮影です。撮影倍率は、9倍程度でしょうか。最新のデジタルボディと年代物の純機械式のベローズの組み合わせが、何処か不釣り合いな感じです。キヤノンのシステムであれば、等倍から5倍までの高倍率撮影が簡単に出来るマクロレンズがあるので、こんな大袈裟な機材を持ち出さなくても済むのですが・・・是非、ニコンにも開発して欲しいレンズのひとつです。

2004.1.11

 沖縄本島北部の宜名真(ぎなま)でほぼ半日狙っていたのが、この寄生バエの産卵行動です。もう今から10年以上前に、この場所で銀塩(フィルム)カメラで撮影し、科学朝日の巻頭に掲載された、印象深い被写体です。ホヒゲハリバエの一種、恐らくリュウキュウホオヒゲハリバエという種です。
 何がスゴイって、ご覧のように雌の産卵管が体長の1.5倍程もあるのです。しかも、この産卵管、いつもは腹部に隠されていて、産卵の瞬間だけ、一瞬にして伸びたり縮んだりするのです。その産卵管で狙うのは、ノカラムシの葉を糸で綴って造った巣の中にいるアカタテハの幼虫です。幼虫の頭に付いてる白い細長い物体が、産み付けられた卵です。頭部を狙って産卵するのは、幼虫の口で除去されないようにするためなのでしょう。
 午前中に1匹のハエを見つけ、今回はビデオで撮影しようとしたのですが、なかなかアカタテハの幼虫が巣の中央から移動しないので、ハエも産卵することが出来ずに、じっと好機が訪れるのを待ったままです。午後になると、ハエの数も増え、巣を造り始めたばかりの幼虫に連続して産卵する様子を撮影することが出来ました。
 一通りビデオ撮影も終わったので、最後にデジカメでも撮影をしようとレンズを向けたのですが、数枚シャッターを切っただけで、ハエは何処かに行ってしまいました。ストロボの光を嫌がったからなのでしょうか・・・


産卵しようとするホオヒゲハリバエの一種
NikonD1X Sigma 105/2.8Macro Speedlight


色付いたセンダンの実
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED PL-Filter
2004.1.11

 今日は午前中から約6時間、沖縄本島最北端に近い宜名真(ぎなま)の旧国道58号線沿いで撮影をしました。国道58号線と言えば、沖縄最長の幹線道路なのですが、この部分だけはやっと車が擦れ違える程度の急な坂です。センターラインもなければ、幅員も一定ではなく、坂の頂上付近には岩がそびえ立っていて、かつてはよくそれが崩れて通行止めになっていました。今では、その下の海岸線沿いに、沖縄本島で最も長い宜名真トンネルが出来、ここはのどかな農道といった風情です。
 この道路脇には、さまざまな草木が茂り、チョウを初め多くの小動物が観察出来、ときどき訪れては撮影をします。
 ほとんど一日、道路脇の草むらにしゃがみ込んで撮影していたのですが、足腰が痛くなると、ときどき気分転換に海側を眺めることもありました。そのときに印象的だったのが、このセンダンのオレンジ色に色付いた実です。海を背景にして、より鮮やかに見えたのかもしれません。しかし、一昨日のイイギリの実もそうですが、例年に比べてこのように色付くのがやや遅いにも感じます。これも暖冬の影響なのでしょうか?

2004.1.10

 昨日に続いての山原(やんばる=沖縄本島北部)通いです。もう、夜暗くなってから到着したので、まずは山の中の灯火巡りです。1月とは言え、夜の山の中でもコーデュロイのシャツ1枚で過ごせる程の暖かさなので、きっと灯火には昆虫が飛来しているだろうと思って探したところ、すぐに10種程のガに出会うことが出来ました。
 その中で、興味深かったのが、このドリンクの自販機のサンプル照明にとまっていた、ガの一種、恐らくハマキガの仲間と思われるもの。透過照明で、しかも無地のバックにとまっているので、まるで標本撮影のように撮れてしまいました。まぁ、ガなのに展翅されてないのが変ですが・・・
 肩の辺りのエラの張り具合とその模様が、何とも不思議な感じです。知人にこの写真を見せたところ、両手の先を交互に袖に入れた中国服を着た人みたいとの感想でした。そう言えば、なんとなくそんな気も・・・


ハマキガの一種?
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight


実をたわわに着けたイイギリ
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6ED PL-Filter
2004.1.9

 カンヒザクラの花を撮影した後、やや離れた場所でこのイイギリの木を見つけました。山際に沈もうとする夕陽の斜光でも受けていれば、もっと背景の緑から浮き上がったかもしれませんが、ちょっと見つけるのが遅かったようです。しかしそれを差し引いても、肉眼で見る限りは、とても美しい光景でした。
 亜熱帯沖縄の冬を映像で表現するのは、なかなか容易ではありません。決して常春の気象ではなく、冬はそれなりに寒いのですが、ひと目見て、冬の季節を感じさせる光景というのは、そうそうありません。その中で、この真っ赤な房状の実をたくさん着けたイイギリの大木は、とても冬らしさを演出してくれる存在です。
 ただひとつ残念なのは、この植物が亜熱帯特有のものではなく、本州などでも見られるものだということです。もう少し寒くなったら、再びこの場所を訪れ、夕陽に浮かび上がった姿を撮影したいと思います。

2004.1.9

 沖縄本島北部の本部半島に、午後少しだけ足を伸してみました。今帰仁村の乙羽岳の山頂広場に植えられたカンヒザクラが、数本の株で開花し始めていました。遠方は霞みがかかり、決して快晴という天気ではなかったのですが、そのちょっとパステル調の青空と桜の花の色が、巧く調和しているように感じました。
 このカンヒザクラについては、昨年も一昨年もいろいろな側面を紹介し、書き尽くした感もあります。今までは、自生種でもない桜を日本一早い桜として、沖縄の冬の象徴のように取り上げるのには抵抗を強く感じていました。しかし、今日のこの写真の青空とのコントラストを見ていて、ちょっと違う印象も持ちました。自生種ではないにしても、少なくとも他の種類の桜よりも、沖縄に最も似合っている種類の桜ではないかと。これはもしかしたら、ほんの一時的な感覚かもしれません。間もなく満開のときを迎えるでしょうから、またそのときに改めて考えてみたいと思います。


咲き始めたカンヒザクラ
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6ED PL-Filter


甘露を集めるアシナガキアリ
NikonD1X Sigma105/2.8Macro X1.4Telecon Speedlight
2004.1.8

 一昨日、虫探しをしたガジュマルの生垣を再び訪れました。長さ5、60m程の生垣なのですが、一往復すると、結構な種類の昆虫が見られます。一昨日のハラビロカマキリの幼虫も、ほぼ同じ場所にいましたし、やはりそのとき見つけたスキバドクガの蛹から羽化したばかりの雌成虫もいました。
 前回とほぼ同じ顔ぶれだったのですが、今回初めて気付いたのが、このアシナガキアリです。アブラムシのコロニーに甘露を求めてやって来たようです。ワーカーの体長は約3mmと決して大きくはないのですが、脚が長く、特に後脚が体長の約1.5倍もあるので、見た目は体長以上に大きく感じます。また、脚が長いだけでなく、歩く速度も早く、普段はなかなかその姿をじっくりと観察することも出来ません。しかし、甘いものがかなりの好みのようで、各種の花やアブラムシ、カイガラムシ、キジラミなどの甘露にやって来ては、熱心に餌集めをします。このようなときは、体の特徴を観察することも可能です。今日のワーカーはどれを観ても、その腹部ははち切れんばかりに膨らんでました。
 最近は、デジタルカメラでの撮影が多く、ついつい安易にシャッターを押し、その場で撮影結果を確認し、不要なカットは消去してしまうということが多く反省しきりです。しかし、今日の被写体はかなり小さく撮影倍率も高いので、久しぶりにガッチリと三脚を立てて撮影をしました。

2004.1.7

 道路脇の植え込みでトウワタの花を見つけました。和名のとおり、実が綿花のようにはじけるのが特徴です。ランタナの花と同じような、オレンジと黄色の細かく組み合わさった構造の花は、個人的にとても好きです。
 そしてまた、カバマダラというチョウの食草としても知られています。カバマダラが属するマダラチョウの仲間のほとんどは、幼虫時代に有毒な植物を食べて育ち、成虫になっても体内に毒を貯えています。そのことで天敵に捕食されるのを回避している標識擬態(ベーツ型擬態)者なのです。
 というわけで、このトウワタには毒(アルカロイド)が含まれています。しかし、これを食べるカバマダラの幼虫にとっては、当然この毒は有効ではありません。あるいは、これらの毒性は脊椎動物など高等動物にとってのみ有効だとも言われます。一方で、同じ昆虫のカマキリは、マダラチョウの成虫を捕獲しても、一口齧った後、慌てて放す行動を見せることもあり、このような場面を目撃すると、やはり昆虫にとっても有毒なのかと感じます。
 また、このような事例もあります。やはり有毒植物として有名なキョウチクトウの葉を餌にするキョウチクトウスズメ(ガ)の幼虫は、よく小鳥に捕食されますし、成虫は警告的な目立つ色彩ではなく、まるで迷彩模様のような隠蔽的色彩をしています。このように毒物質の有効性というのは、とても複雑で興味深いものだと思います。


トウワタの花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6


ハラビロカマキリ幼虫
NikonD1X DX AF Fisheye Nikkor10.5/2.8 Speedlight
2004.1.6

 今年初めての沖縄からの南島漂流記です。明後日のテレビ用のビデオ編集を始めたところ、必ずあると信じていたある昆虫の映像がないのに気付き慌てました。図鑑によると12月まで成虫の見られる種類なので、暖冬ならばまだ間に合うかもしれないと、早速事務所近くの琉球大学構内へ探しに行きました。ガジュマルの生垣を小一時間探しましたが、生憎目的の昆虫は探し出すことは出来ませんでした。その代わりに5、6種類の昆虫に出会いました。そのひとつが、このハラビロカマキリの幼虫です。
 このハラビロカマキリ、特に冬場の幼虫の姿には特別な思い出があります。今からちょうど18年前、大学院での論文テーマにこのハラビロカマキリを選んだのです。最終的な課題は共食いを伴う交尾行動だったですが、それに先立ち沖縄での基本的な生活史の調査をしました。
 その結果、冬場は餌にあり付けることは極めて希なようで、ほとんど成長しません。それどころか、この季節に死んでしまう幼虫の数はかなりのものでした。それを象徴するかのような薄っぺらい腹部が印象的でした。それに比べれば、まだまだ厚みの感じられる腹部を持つ幼虫です。これも、18年前よりも明らかに気温の高い冬のために、餌を確保出来ている結果なのでしょうか?

2004.1.4

 昨日に続いて東京の実家の庭にやって来た野鳥です。今日は、その中で最も数も多く、力も強いヒヨドリです。メジロなどが餌を食べていても、一蹴して餌場を横取りしてしまいます。太刀打ち出来ない相手としたら、余程気紛れにやってくるカラスくらいでしょうか?かつては、モズがさらに威勢よかったのですが、最近実家の庭では見掛けません。
 このようにして、我天下を謳歌しているように映ったヒヨドリですが、一瞬にしてその図式が崩壊しました。すぐ下の草むらにジッっと身を潜めていたネコが、突如飛び掛かったのです。辛うじて、ヒヨドリはその攻撃から身をかわして逃げることが出来ましたが、しばらく戻ってきませんでした。それでも、そのネコは辛抱強くまた鳥たちが戻って来るのを待っていました。
 東京の実家のそれこそ猫の額程に庭ですが、その中に小さな生態系が展開していることが興味深く思われました。
 今年もちょっとイレギュラーな形でスタートしましたが、明日からは再び亜熱帯の島からお送りする、いつもの「南島漂流記」に戻ります。


ミカンにやって来たヒヨドリ
NikonD1X Nikkor-Q Auto135/2.8


ミカンを食べに来たメジロ
NikonD1X Nikkor-Q Auto135/2.8
2004.1.3

 季節柄、東京の実家は全国からの果物の到来物で賑わっています。食べる速度に追い付かず、どうしても傷んでしまうものもあります。そのような果物を庭先の枝に差しておくと、野鳥がやってきます。そのほとんどがヒヨドリですが、ときにはメジロやその他の野鳥も混ざって訪れます。
 その光景をカメラに収めようと思ったのですが、生憎望遠系のレンズは持ってきていません。そこで、父所有の新型の300mmまでのズームレンズを借りたのでですが、カメラボディ側に何の情報も表示されず、シャッターを切っても何も撮影されません。他のカメラボディにも装着してみても同じ状況で、どうも故障のようです。きっと内蔵されているロム基盤のトラブルなのでしょう。光学的には何も問題はなく、ファインダーで画像は確認出来るのに、デジタルカメラでは何も記録されない不可思議・・・
 仕方なく、次に焦点距離の長い135mmの望遠レンズを探し出してきました。もう40年以上前に製造された、かなり古い製品です。しかし、最新のデジタルボディにも問題なく装着出来、シャッターを押してみると、今度はちゃんと画像が記録されています。マウント部分に電気接点も何もない純機械式のオールドレンズですが、簡単に故障してしまう最新のレンズをよりも、明らかに有益な仕事をしてくれました。

2004.1.2

 昨日に続いて、東京の実家の庭木の映像です。庭の片隅に高く生長したミモザの木があります。3月にもなると鮮やかな黄色の小さな花を、枝全体に着ける春の花です。しかし、この最も気温の下がる季節に、枝々には既に黄色く色付いた蕾をたくさん準備しているのです。特に、朝陽を背後から受けると、その黄色い蕾の部分だけが、浮き上がるように輝きます。麗らかな春の陽気の下、ミモザの花が満開になる光景が今から想像出来るようです。
 ところで、今日もそうですがニコンのカメラボディにシグマ製のレンズの組み合わせで使っています。昨日初めて使用したレンズで、シグマ製レンズはちょうど12本購入したことになります。純正のニコン製のレンズにはまだ負けますが、それに迫る本数です。私が写真を撮り始めた小中学校の頃は、レンズ専門メーカー製のレンズは、スペックと価格こそ魅力がありましたが、その性能はというとカメラメーカー純正レンズと比べると雲泥の差がありました。それが、現代では遜色ないどころか、スペック、性能、価格の3拍子揃った製品が目白押しなのですから、隔世の感があります。


蕾の色付くミモザの枝
NikonD1X Sigma105/2.8Macro EX


ロウバイの花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 Speedlight
2004.1.1

昨年に続いて、東京でスタートを切った2004年の「南島漂流記」です。昨年の東京は、2日、3日と雪が降りましたが、今年は燦々と陽が降り注ぎ、とても暖かい陽気に恵まれています。
 実家の庭では、今ちょうどロウバイの花が見頃です。漢字で書くと「蝋梅」。本当に蝋細工のような透明感と色彩をしています。但し、ロウバイの花すべてがこのように美しい色彩とは限らず、灰色のくすんだ株も少なくありません。東京近辺では、12月下旬から1月に掛けて開花します。例年ですと、寒々しい庭にポツンと咲いていたり、あるいは薄らと雪が積もっていたりするのですが、今年は暖かな陽光を背後から受けて、本当に蝋細工のような輝きです。香りもよく、この文章を書いている2階の部屋にも漂ってくる程です。
 撮影に使用したレンズは今回新しく購入したもの。デジタル専用レンズですが、これまで常用してきたNikkor18-35/3.5-4.5よりもコンパクトで望遠域が広く、最短撮影距離も25cmと今後活躍しそうなスペックです。
 今年から「南島漂流記」の写真のサイズを少し大きくしてみました。このためには、粗が目立たないような写真を心がけなければと、思っています。
※その後、図鑑には花芯まで黄色い品種は、ソシンロウバイという名称で載っていました。

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