南島漂流記
2004年7月後
>戻る

2004.7.31

 真夏の炎天下は、虫たちの活動も低調なため、被写体探しは、朝や夕方が適しています。日が傾き始めた夕刻、シマグワの葉の上にいるカミキリムシを見つけ、カメラに収めました。撮影したときから、何処か見覚えのある姿なのですが、種名を思い出すことが出来ません。図鑑で調べれば、すぐに判ると思ったのですが、それでも該当する種が見つけだせません。
 最もよく利用する昆虫図鑑は、実は私も参加して作ったものです。今から17年前に、まだ沖縄の昆虫を本格的に扱った昆虫図鑑がなかったために、初めての沖縄産昆虫図鑑を目指して編纂したものです。それから10年後には増補し、約1,000種程の種類を収めることが出来ました。
 それでも、沖縄に生息している昆虫は、約6,500種とも言われていますから、代表的な普通種を扱ったレベルに過ぎません。ですから、今日のように見覚えのある種類でも、まだ載っていない種が出てきてしまうのです。
 この図鑑を作った当時、本土の昆虫図鑑しかありませんでした。しかし、温帯と亜熱帯では生息する昆虫の種には大きな隔たりがあり、実用的ではありませんでした。何とか、沖縄の実状にあった昆虫図鑑を、子供達に使って欲しいという意気込みでした。教科書にしても、本土の季節や気候を元に編集された内容では、沖縄とではギャップがあります。例えば、本土では梅雨明け直後に夏休となり、昆虫の活動の真っ盛りに当たります。しかし、梅雨明けから1カ月以上経過した沖縄では、乾燥が進み、既に夏枯れという状態になっているのです。
 ところで、このカミキリムシの種名の判る方は、いらっしゃるでしょうか?
 ※徳島のNaoki Ohtsukaさんから、サビアヤカミキリでは?というご指摘を頂きました。タケ類を寄主植物にする種が、何故シマグワにいたのか不明です。近くにも竹は見当たりませんでした。


シマグワの葉にいたカミキリムシの仲間
Ricoh Caplio GX


那覇市内国道58号線
Ricoh Caplio GX
2004.7.30

 私が沖縄にやって来た26年前の1978年の今日、交通方向の変更がなされました。つまり、それまではアメリカ同様、車が右側、人が左側通行だったものが、現行の車の左側、人の右側通行に改められたのです。
 その前後には、「車は左、人は右」という標識があちらこちらに立てられていましたが、その年に沖縄にやって来たばかりの私にとっては、当たり前のことが表示された不思議な感覚にとらわれました。
 大学の1年の夏休は、7月1日に休みに入るのと同時に自動車教習所に通い、7月30日までの免許取得を目指しました。しかし、右側通行最後の卒業検定で、100名以上の受験者の中で私ひとり不合格となった苦い思い出もあります。
 交通方向の変更の日のことを「730(ナナサンマル)」と呼んでいましたが、その直前に撮影したほぼ同じ場所の写真があります。当然、その写真の走行する車のライトの光跡は右側に赤いライト、左側に白色のライトが写っています。しかし、26年前の写真に比べると車の台数が少なく、やや寂しい写真となってしまいました。

2004.7.28

 花の蜜や花粉を求めて、次から次へと昆虫がやって来ます。しかし、そこには美味しい餌と共に危険も潜んでいます。その代表的な危険が、このアズチグモでしょう。花弁に潜み、花にやって来た昆虫を一瞬のうちに捕獲してしまうのですから。ときには、この体長1cmに満たない体で、大型のアゲハチョウまでも捕獲してしまいます。
 このアズチグモの優れている点は、体色や模様に変異の認められることです。基本的に白いのですが、黄色い花に適応した黄色の姿も見ますし、腹部や脚に薄い斑紋が出ることもあります。そして、今日見たアズチグモも白い腹部の一部分に、黄色い筋が見られるものでした。センダングサの雄しべと同系色で、なかなか巧い配色だと思います。
 ところで、この体色、模様は固定されたものではなく、カメレオンのように環境に合わせて変化するという話も聞きます。以前、それを確かめようとして、背景の色の異なる環境に放置してみたことがあるのですが、そのときは顕著な変化は認められませんでした。かなり劇的な変化の幅を持っているのでしょうか?それともわずかなものなのでしょうか?何れ、また調べてみたいと思います。


ハナアブを捕食するオキナワアズチグモ
Ricoh Caplio GX Speedlight


ヘルクレスオオカブトムシのペア
Ricoh Caplio GX Wide-Converter
2004.7.26

 今月の17日にも海外産の動物の移入のことに触れましたが、今では昆虫までもが輸入解禁になってしまっています。今日の写真のように、世界最長と言われる中南米原産のヘルクレスオオカブトさえ、お金を出せば誰でも手に入る時代なのです。こんな巨大昆虫が野外に逃げ、万が一繁殖でもしたら、在来種はどうなってしまうのでしょうか?
 害虫にならない種や、ワシントン条約に抵触しない種は、輸入が可能になったようですが、これでいいのでしょうか?海外だけではなく、国内でも、ふるさと小包などで、カブトムシやクワガタムシが何処でも手に入ってしまうことが不思議です。その種や亜種が生息しない地域で、繁殖を始めたら、生態系への影響は必至です。事実、北海道には分布しなかったカブトムシが、既に定着していたりする例もあるのですから。もう少し見識ある方針を採ってもらいたいものです。
 一時期、文化活動として流行った国蝶のオオムラサキの飼育・放蝶運動が盛んでした。しかし、遺伝子の撹乱を危惧した研究者らの反対で、現在は下火になっています。このオオムラサキよりも遥かに深刻な問題だと思うのですが、このままで本当に
いいのでしょうか?

2004.7.25

 夏空の下、畑の片隅に植えられたオクラの立派な花が目立ちます。初めてこの花を見たとき、なかなか見映えのする容姿に、てっきり園芸植物だと思ったのですが、その茎の先端に、あの見覚えのあるオクラの実が付いているのを見つけ、驚いたのを覚えています。
 花は立派で当たり前、ハイビスカスと同じアオイ科の植物なのです。そして、オクラという名前は英語。原産地はエチオピア周辺と、何処までも意外な生い立ちです。
 軽く湯がき、輪切りにして、鰹節と醤油をかけて、あのネバネバ感を味合うのは、極めて日本的な存在だと思っていたのですが、日本国内で本格的に栽培されるようになったのは、1970年代からだそうです。エジプトでは2000年も前から、アメリカでは、現在でも盛んに栽培されているそうです。アメリカ人の食べるオクラ、ちょっと想像出来ませんが・・・


オクラの花
Ricoh Caplio GX


そばの新芽
Ricoh Caplio GX Speedlight
2004.7.24

 最近は、次から次へと新しい野菜を目にします。特に、ハーブやサラダ用の食材が多かったりしますが、今日は意外なものを見つけました。「そばの新芽」というものです。サラダ用に、いろいろな種子をカイワレ大根風に育てたものが流行ってますが、このソバは初めて見ました。
 意外なのは、単にソバの種子だということではありません。子供の頃に、読んだ『おそばのくきはなぜ赤い』という昔話を思い出したのです。
 要約すると、まだ植物が口をきいていた昔、ある冬の日、「むぎ」と「そば」が川の畔いると、白髪の老人が川をおぶって渡してくれと頼むのです。凍えそうな川を見て、「むぎ」は断るのですが、「そば」は必死に老人を川向こうに渡すのです。実は、その老人は作物の神様で、感心な「そば」は春から秋のよい気候のときだけ畑に植えられ、不誠実な「むぎ」は真冬にも畑に植えられるようになったというのです。しかし、「そば」はそのときの凍えた足が、未だに赤いままだというお話です。
 なるほど、ソバは新芽のときから茎は赤いのですね!

2004.7.23

 シマグワの実が熟しているのを見つけました。2月13日にも、3月3、4日にも紹介したように、沖縄本島では、一年に何度も花が咲き、実が着きます。地域的な開花や結実のサイクルがあるのでしょうか?それとも、それぞれの株な生理的なサイクルなのでしょうか?
 シマグワの実は、熟し始めると奇麗な赤色になります。さらに完全に熟すと黒みを帯びます。見た目には明らかに赤いほうが鮮やかなのですが、最も糖度の増した状態では、何故黒くなるのでしょう?
 花が昆虫の受粉の恩恵を受けるために美しいのなら、昆虫の惹かれる花を美しいと感じる人との間に、それ程大きな感覚の差は存在しないのかもしれません。一方、このような実は野鳥たちによって食べられ、種子を遠くに運んで貰って、分布を拡げる戦略を採っているのでしょうか?ならば、より熟した状態で最も美しい色彩になるほうが自然だと思います。それとも、野鳥と人間の感覚には、昆虫以上に差があるのでしょうか?


シマグワの実
Ricoh Caplio GX Speedlight


ヒトリモドキガの一種
Ricoh Caplio GX Speedlight
2004.7.22

 いつもの撮影ポイントのひとつで被写体探しをしていると、目の前の草むらから1匹の蛾が飛び立ちました。何度か、飛んではとまりを繰り返していたかと思うと、やがてセンダングサの葉の上に落ち着きました。
 近くに寄ってみると、ヒトリモドキガの仲間のようです。一瞬、シロスジヒトロモドキかと思ったのですが、白帯の向きが縦ではなく斜横向きです。次に思い付いたのが、シロオビホタルガですが、これは石垣、西表島に生息し、沖縄本島では見られる訳がありませんん。しかも、ヒトリモドキガ科ではなくマダラガ科です。
 しかし、そう言えば、ヒトリモドキガ科とマダラガ科の蛾は、どちらも三角形の翅(はね)を持ち、とてもよく似た姿をしています。他人の空似ではありませんが、科が違うのにちょっと面白いことだと感じました。もし、今日見掛けた蛾が、既に知っている種類であったら、こんなことは思いもしなかったに違いありません。
 ところで、この蛾の種名は、事務所に戻って図鑑を開いてみましたが、生憎載っていません。果たして、何という種類でしょうか?と、また何方かからの情報を期待する、ネット頼みをしてしまいましょう。
※早速、昆虫写真家の新開孝さんから、ツマキモンシロモドキではないかとのご教示を頂きました。台湾、中国、インドーマレーに広く分布し、国内では種子島以南の島々で偶産的に記録があるそうです。ということは、ヒトリガ科ですね・・・私は、27年の沖縄生活で初めて見ました。

2004.71.19

 「海の日」の今日、とても大気がクリアで、遠くの島が近くに見えました。山原(やんばる=沖縄本島北部)からは、伊是名島や伊平屋島が西の水平線に浮かんでいますが、状態が悪いと全く見えないこともあります。反対に、今日のような日には、「こんなに近くにあったかな?」と思う程大きく感じます。
 そして、最北端の辺戸岬からさらに北には鹿児島県の与論島が見えます。いつもは、かなり霞んでいることが多いのですが、今日はクッキリと種々の施設まで確認出来ます。業務用ビデオの最望遠端で見ていると、港で作業する人まで見えそうな気がします。
 今年は梅雨明け宣言直前に台風の接近があり、梅雨明け直後もあまりパッとした天気ではありませんでした。それが、今日の大気の状態は、いつもの梅雨明け直後のようにクリアで、気分まで晴れたようです。


沖縄本島最北端から与論島を望む
NikonD100 Sigma18-125/3.5-5.6 PL-Filter


電灯に飛来したカミキリムシの仲間
Ricoh Caplio GX Speedlight
2004.7.18

 夏の夜の楽しみのひとつに、山の中の電灯に集まる昆虫を見て回ることがあります。特に今晩のように新月に近い条件が最高です。
 山の中の電灯にもいろいろあります。公園の水銀灯、電話ボックス、自動販売機のサンプル照明、そして忘れてならないのがトイレです。入口にドアがないので昆虫が入り易く、反対にある程度閉じられた空間だから、昆虫が逃げ難いからでしょうか、なかなか効率的なポイントです。さらに、ほとんど白い壁に囲まれ、明るく照明されていますから、とても昆虫が探し易いのです。
 しかし、困ったこともあります。隣の芝生的な先入観かもしれませんが、どうも男性用よりも女性用に集まる昆虫のほうが多いように感じるのです。単に方角的な理由なのかもしれませんが・・・。山の中の深夜のトイレを訪れる人は稀ですが、女性用の入口近くを懐中電灯を手にウロウロしている姿は、どう見ても普通ではありません。夏の夜のヘンな楽しみに間違われたら困りますからねぇ・・・

2004.7.17

 今日はとても夏らしい一日でした。その夏空をバックに、大きなジョロウグモを見つけました。
 雌成体の体長は50mm前後ですが、長い脚まで入れると20cm以上になる日本最大のクモです。直径2mにもなる網には、ときに、メジロなどの小鳥がかかることもあるそうです。私も体長15cm程のアオカナヘビが餌食になっているのを目撃したことがあります。
 雌と巣は巨大でも、雄は体長わずか10mm弱しかありません。自分の10倍近くもある雌に接近し、交尾を試みるわけですが、動く物すべてを餌とみる雌に捕食されてしまうことも少なくありません。しかし、この巣の雄は無事に雌の背中に辿り着けたようです(オレンジ色の小型のクモ)。
 この巣の近くには、セミやトンボやチョウが豊富ですから、早く成長したのでしょう。小鳥までを食べてしまうのですから、天敵は悪ガキと台風くらいでしょうか?


オオジョロウグモ
Ricoh Caplio GX Speedlight


ミシシッピーアカミミガメ
Ricoh Caplio GX
2004.7.17

 マングースなど、いろいろな移入動物が問題になっていますが、このミシシッピーアカミミガメはその代表のような存在ですね。もう、何処にでもいますから、この種名を思い出さないと在来種のような気持ちにもなってしまいます。
 沖縄でも、ちょっとした池など何処にでもいるのですが、意外と神経質なので、気付かないことも多いようです。少し離れた場所から観察していたり、池の畔で静かにしていると、あちらこちらの水面から顔を出したり、甲羅干しを始めます。
 それにしても、動物の移動による弊害が余りにも軽視されています。何もマングースやイエネコによるヤンバルクイナの捕食だけが、特異な問題なのではありません。ある一定の地域に遺伝的に隔離されてこそ、生物の種というものが誕生するのですから、それを崩壊させてしまう行為を、もう少し考える必要があるのではないでしょうか?
 夏休ももう目前です。今年もまた、本土産のカブトムシやクワガタムシがお店で売られ、外に逃げ出すでしょう。さらに最近では、海外産まで輸入解禁になっていますから、在来種たちの存在の危機は益々増大しています。

2004.7.16

 ガジュマルの葉の中央にいくつもの虫食い穴が見られます。探してみると、やはりこのカミキリムシが犯人でした。上翅の白い斑紋の数から、このような和名が付けられています。沖縄本島から台湾まで生息しています。
 またこれとは別に、とても近縁なムツボシシロカミキリという種類が、沖縄本島北部から九州にかけて生息しています。こちらは、中央の大きな白斑が、左右2つに分かれていて、合計6個に見えます。
 この近縁の2種類のカミキリムシが同時に見られるのは、沖縄本島北部だけということになります。ムツボシのほうはそれほど数が多くなく、あまり見掛けません。ほとんど同じ植物を食べるので、いつしか同じ葉、あるいは隣り合った葉の上に同時に2種類いるところを撮影してみたいのですが、なかなかそのチャンスは訪れません。


イツホシシロカミキリ
Ricoh Caplio GX Speedlight

>戻る