南島漂流記
2004年2月後
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2004.2.29

 午前中は晴れ間が広がっていたものの、午後から次第に雲が多くなり、青空も何処かに隠れてしまいました。そのような空模様の中、林道を走っていて出会ったのが、この植物です。和名はビロードボタンヅル。「ボタンヅル」や「センニンソウ」の名称が付く、所謂クレマチスの仲間です。
 実の直径は10数cmはあるでしょうか?風に吹かれて揺れる様は、如何にもケセランパサランとでも表現したくなる雰囲気です。これを魚眼レンズで見上げるように撮影すると、森の梢からぶら下がっているシャンデリア風のオブジェのようで、なかなか面白い光景でした。惜しむらくは、これを青空バックで撮影出来たら、より魅力的な影像となったことでしょう。
 しかし週間天気予報では、水曜日までは雨と曇りマークの連続。晴れマークは木曜日からですが、生憎その日はTVの生放送担当の日。さらに金曜日までに運転免許証の更新。確定申告書の制作などなど、なかなか事は巧く運びそうにありません。早めの春が訪れようとしている山原の森は、ただでさえ撮りたいものに溢れているというのに・・・


ビロードボタンヅルの実
NikonD1X Nikkor10.5/2.8 Fisheye


スダジイ新芽
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6
2004.2.28

 ハナサキガエル中心の生活をしている間に、山原(やんばる=沖縄本島北部)はすっかり春になり始めていました。
 ハナサキガエルとカンヒザクラが、例年よりも遅れていたため、そのことばかりに気を取られていました。ところが今日、昼間の山原の森を見て驚きました。森のあちらこちらに春の兆しがいっぱいなのです。アカメガシワの深紅の新芽、タブノキの薄紅色の新芽、ヤツデの新芽、タラノキの新芽、ヒサカキの小さな白い花、クロバイの房状の白い花、ハクサンボクの満開の白い花、エゴノキのややピークを過ぎた白い花などなど。
 山並にもところどころに、新緑の若葉が混ざり始めています。山原の森の中で最も多いと言われているスダジイ(イタジイ)も、木によっては新芽が展開し始めています。若葉だけと思いレンズを向けたところ、ファインダーの中には小さな顆粒状の蕾の着いた花芽までが見えました。今年の春の訪れは、かなり早いようです。
 暑いような日の続いた昨年12月。ここ10年来なかったような冷え込みの続いた1月下旬から2月上旬。そして早めの春が訪れようとしている2月下旬。いったい自然の暦はどうなっているのでしょう?

2004.2.27

 昼前に、琉球大学の構内のコスモスに訪花するミツバチを50カット程撮影してきました。一昨年の2月25、26日にも同じ場所で、同じ撮影をしています。
 ほとんど同じシュチエーションなのですが、レンズが前回は35mmフルサイズ用の対角魚眼レンズ、今回はAPS-Cサイズデジタル専用対角魚眼レンズの違いがあります。当然、後者のほうが画角が広く背景が広く写り込んでいますが、反対にミツバチはやや小さめかもしれません。
 2年前には、デジタル一眼レフカメラで本格的魚眼レンズ撮影など出来ませんでした。当時は、デジタル専用レンズが登場するとは思ってもみませんでしたが、さらに2年後には、デジタル一眼レフカメラの撮影素子もすべて35mmフルサイズとなり、このデジタル専用レンズも過去の遺物となっているかもしれません。カメラボディにしても、当時最新鋭の機種で、メーカーのラインナップ上でのポジションは、現在でもそれ程大きな違いはまだありません。しかし、確実に2年後には、時代遅れの機種となっていることでしょう。次々と新機能の機材が開発されて便利となる一方で、無理して手に入れた機材があっという間に過去の物と化していく現実。嬉しいのか、悲しいのか・・・
 機材面以外で、2年前と確実に違った点もありました。前回は、なかなか飛んでいるミツバチを写し止められなかったのですが、今回はかなりの歩留まりで写っていました。腕が上がったのでしょうか??


コスモスに訪花したセイヨウミツバチ
NikonD1X Nikkor10.5/2.8Fisheye Speedlight


カンヒザクラの蕾
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro X1.4Telecon
2004.2.25

 昨日に続いてカンヒザクラの話題です。沖縄本島中南部でも、ほとんどの株が満開からややピークを越した状況で、葉も目立ってきました。それでも、遅い株を観察すると、まだこのように蕾がまとまって見られもします。
 昨日も触れましたように、カンヒザクラの開花は、株によってかなりのバラツキがあります。さらに、花の色、開き具合、花弁の皺、花柄の長さなど、変異の要素もたくさんあります。
 ソメイヨシノにも、花の濃さには違いが感じられますが、一般に白に近い淡い紅色で、カンヒザクラ程ではありません。さらに、地域ごとに一斉に開花のピークを迎え、数日で桜吹雪きとなり散っていくのが一般的です。その満開の華やかさと散り際のはかなさの対比が、多くの日本人に愛される理由のひとつなのかもしれません。
 一方で、沖縄のカンヒザクラの濃厚な紅色。開花期が一定ではなく、1カ月以上に渡って花が楽しめるなど、同じ桜とは言え、全く異なった花のようです。しかし、沖縄の気候風土の中では、ソメイヨシノよりもこのカンヒザクラこそが相応しい存在のような気がします。

2004.2.24

 ほぼ1カ月に及ぶハナサキガエルの撮影が終わり、ちょっと虚脱感と筋肉痛を感じています。特に今年どうしても撮影しなければならない理由はなかったのですが、すっかりのめり込んでしまいました。かなりの時間と労力を費やす結果となりましたが、それは、単に例年よりも産卵時期が遅れたことに因ります。
 例年よりも遅れている自然現象はハナサキガエルだけではありません。もっと身近な存在で言えば、カンヒザクラもそのひとつでしょう。沖縄本島では、例年1月中旬頃に北から順に開花し始めます。そして、2月中旬には南部まで満開となるのが普通です。ソメイヨシノように、ほとんどの株が一斉に開花するような性質はなく、株毎に開花時期のバラツキがありますが、それでも明らかに今年の開花は遅く感じられます。今日の写真は、例年であれば既に葉桜がメインになっている北部のカンヒザクラです。よく観ると、まだ蕾さえ残っています。しかし、花がノンビリしていたのに耐え切れずか、次々と若葉が出始めています。
 近年、暖冬や異常気象という言葉を頻繁に耳にします。生物の進化の永い歴史の中では、様々な条件に変動が生じてきたことでしょう。それが、小さな変動であれば、各々の種は容易に対応してきたはずです。しかし、滅多にないような大きな変動には対処し切れないか、長い時間をかけて適応してきたのでしょう。近年出会う変動のひとつひとつは、ささいな変動なのか、あるいは現存種に大きなダメージを与えるような大規模な変動なのか、そしてそれは人の社会生活によって引き起こされたものなのか、ついつい気になってしまいます。


カンヒザクラの花
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro


石川市民の森・城の展望台
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6
2004.2.23

 あるいは、まだ産卵行動の一部が撮影出来るかもしれないと期待していたハナサキガエルに、あっさりふられてしまいました。天気もよいのですが、早々に山原(やんばる=沖縄本島北部)を引き上げました。時間に少し余裕が出来たので、以前から気になっていたことを確認しに行ってみることにしました。
 それは沖縄自動車道の石川インターの背後の小高い森の中腹に、不思議な構造物が見えるのです。但し、よく目を凝らして見ても、先端が3本に分かれた尖塔らしき構造のようだとしか判りません。周りの森には、他に関連したものは何も見えません。もう10年以上も「ラブホテル?」「煙突?」「別荘?」と想像を膨らませてきました。インターを降り、凡その見当で車を走らせます。曲がりくねった細い坂道をしばらく走ると、「石川市民の森」という公園にぶつかり、それ以上先には進めなくなりました。車を駐車場に置き、公園の案内版を見ると、「城の展望台」というものがあります。地図のとおりに坂道を数分歩くと、確かに永年遠くから眺めていた物件に行き当たりました。ミニチュアの西洋の城を模した展望台が、その正体だった訳です。その大きさは幅も高さも5〜6mと意外に小さなものでした。
 本来ならばやや拍子抜けするような結末でしたが、この物件ちょっと気に入ってしまいました。とてもマニアックな話題になりますが、私の一番のお気に入りのTV映画が「プリズナーNO.6」というイギリス製作のものです。その主要ロケ地が、ウェールズのポートメリオンという観光地で、やはりこのようなミニチュアの建物がたくさん並んでいて、不思議な雰囲気が漂っているのです。ちょっとそれを彷佛させるような、永年の疑問の正体でした。

2004.2.23

 22日の深夜から23日の早朝にかけて、再びハナサキガエルの産卵場所を訪れてみました。暗いうちに到着したのですが、深夜の渓流は静まりかえっていて、時折イシカワガエルの鳴き声が聞こえてくるだけです。あの聞き慣れた「ピヨ、ピヨ」という鳴き声と、踏みそうになる程のカエルたちが嘘のようです。滝壷の水底にも、ほんの数匹単独の雄がいるだけです。但し、21日の早朝よりも明らかに卵の数は増えていますから、21日の晩にも産卵は行われたようです。
 16日の晩から滝壷にカエルが集まり始め、20日と21日の晩に渡って産卵し、その翌日はもう何ごともなかったかのような静けさ。陽が昇り、明るく照らし出された滝壷の中には、キラキラ輝く卵塊が残されているだけです(左下の岩影など)。
 滝壷に見られる卵の数と集まってきたカエルの数を考えると、必ずすべてのカエルが産卵出来たとは思えません。産卵に至らなかった雄も雌も少なくないことでしょう。それでも、カエルたちは何かを切っ掛けに滝壷を後に、元の環境に戻っていきます。反対に集まり始める切っ掛けも気になります。毎年同じ時期になると、小さな滝壷に集合し、一斉に産卵するハナサキガエルたち。静寂を取り戻した滝壷を前に、自然界の不思議を感じられずにはいられません。


ハナサキガエルの産卵の痕
NikonD1X Nikkor10.5/2.8 Fisheye


夜間、林床で活動するイボイモリ
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 Speedlight
2004.2.21

 今シーズンのハナサキガエルの産卵は遅く、同時にその時期に同じ渓流環境で見られる動物も例年とはやや状況が異なりました。中には例年どおりに行動しているものもあれば、いくら通ってもほとんどその姿を見られないものもありました。
 特に気になっていたのが、このイボイモリ。近年生息数の減少している動物ですが、それでもこの時期に夜の渓流歩きをすれば、必ず姿を目にしたものです。どうしてしまったのだろうと心配していたところ、渓流通いの最後の晩にやっとこの姿に遭遇することが出来ました。
 胴体側面にある肋骨の突起が、和名の「イボ」の由来です。この手の動物の苦手な人には、何ともグロテスクな姿に映るに違いありません。私も、以前はそれ程魅力を感じる存在ではありませんでした。しかし、このイボイモリ、所謂「生きる化石」と言われるもので、1000万年以上前のヨーロッパの地層からも、ほぼ同じ姿で化石が見つかるそうです。そのような永い時間、姿を変えずに生きてきたと考えると、この姿も深い意味があるのでしょう。そう思って見ると、何処か趣きが感じられるのが不思議です。
 日本国内で、イモリは決して人間と疎遠な存在ではありません。しかし、国内に生息するイモリの仲間は、わずかに3種類です。本土のアカハライモリ、琉球列島のシリケンイモリ、そしてこのイボイモリです。この3種類の中で、最もその姿を見るのが難しい存在とも言えます。

2004.2.20

 ついにハナサキガエルの産卵の日がやって来ました。今週に入ってから、滝壷周辺で見られるカエルの数が日に日に増え、日没後の「ピヨ、ピヨ、ピヨ」という鳴き声も激しさを増していました。さらに、昨夜から滝壷の水底に潜っているカエルの姿も確認出来るようになってきました。
 そして、今日の深夜、産卵行動が本格化しました。水底にはおびただしい数のカエルが見られます。ただ、絶えず激しく水が流れ込んでいる滝壷の水面は、波紋が収まるということがありません。そのために、水中で行われている行動の詳細をつかむことは容易ではありません。さらに、水面越しの水中をシャープに写しとめることは困難を極めます。それでも、ときおり波紋がやや穏やかになった瞬間に垣間見える行動には驚かされます。20〜30匹ものカエルが団子状態になったものが、いくつも確認できます。既に産卵された卵塊は、キラキラと輝く真珠のようです。
 ほぼ1カ月前から数日おきに、そしてこのところは1週間連続しての産卵現場通いの末に迎えた今晩のクライマックス。非効率的な仕事の典型のような撮影でしたが、今晩の滝壷の中の卵やカエルの姿を見て、決して無駄な時間ではなかったと感じました。


ハナサキガエルの集団産卵
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6 Speedlight


シダの葉で休むホントウアカヒゲの雌
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6 Speedlight
2004.2.19

 もう毎日のように報告するのもはばかられますが、ハナサキガエルの集団産卵は今晩もお預けでした。しかし、やっと滝壷の水底に潜り始めたカエルや、わずかに産まれた卵が確認出来ましたし、滝壷周辺のカエルの数からして、明日の晩こそは間違いないと確信出来る状況になりました。
 毎晩の渓流歩きでは、昨夜のイシカワガエルのペアのように、思わぬ副産物に出会うこともあります。今夜のオマケは、このホントウアカヒゲ。リュウビンタイという大きなシダの葉陰で休んでいたのは雌の成鳥です。
 実は、一昨日の晩にも、ほとんど同じ場所で寝ているのを見つけました。そのときは偶然なのだろうと思っていましたが、どうもこの場所が彼女のお気に入りの塒(ねぐら)のようです。明日の夜も、こっそりと覗いてみることにしましょう。

2004.2.18

 またしても、ハナサキガエルにふられてしまいました。今晩は期待を込めて、もう決め打ち状態で、業務用の大型ビデオ一式を担いで渓流に入ったのですが、まだクライマックス一歩手前のようでした。30kg近い機材を持っての深夜の渓流歩きは、どう考えても楽しさよりも苦しさが先行してしまいます。それも、もう4日連続、のべ10日以上となると、何処か修行の世界のようです。
 日増しに滝壷周辺に集まるハナサキガエルの数は増えてますから、その時は確実に近付いてきています。「もう今シーズンは諦めようか」という気持ちと「ここまで通ったのだから意地でも撮影するぞ」という気持ちのせめぎ合いです。
 撮れなかったときの言い訳を考えながら、弱気になったところに、こんなシーンに出会ってしまいました。イシカワガエルが、しかもペアで仲良く、崖の上の穴からこちらを見下ろしています。「アイツ、また来てるよ!」「まだ懲りないのかしらね?」とでも会話しているのでしょうか?これだから、野生動物相手の撮影はやめられません!やはり意地でも撮らなければ・・・


穴からこちらを覗くイシカワガエルのペア
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6ED Speedlight


ハナサキガエルのペア
NikonD1X Sigma55-200/4-5.6 Speedlight
2004.2.17

 「今晩こそは!」と思っていたハナサキガエルの集団産卵ですが、またまた肩透かしに終わってしまいました・・・
 それでも、日没と同時に滝壷周辺に集まってきたハナサキガエルの数は、ざっと50〜60匹でしょうか?明らかに前夜に比べて、2〜3倍に増えたと思われます。さらに、前夜はほとんど確認出来なかった抱接ペアも、4、5ペア見ることが出来ましたから、確実に一斉産卵の晩は近付いてきています。そして、雄が雌を呼ぶ鳴き声「ピヨ、ピヨ、ピヨ」も、かなり盛り上がってきています。
 もうひとつ、嬉しくない産卵に結び付く徴候も、これまで余りお目に掛らなかったヒメハブですが、今夜は3匹に遭遇しました。尤も、例年の産卵の前後にはそこら中を動き回るヒメハブの姿を見ることになりますから、それに比べればまだまだなのかもしれません。
 それにしても、このハナサキガエルのペアもかなりのノミの夫婦状態ですね。しかも同系色のペアだったために、暗がりでは最初ペアであることに気付きませんでした。

2004.2.16

 もうこれまでに何度となく、この場で話題にしてきたハナサキガエルの産卵行動。例年よりも1カ月前後遅れていて、どれだけ無駄足を運んでいることでしょうか・・・。これまでは、ちょっとした産卵に結び付く徴候を見い出しては、「いよいよか!?」と期待することの繰り返しだったのですが、いつも空振りでした。
 それが、ついにその時が近付いてきたようです。今日は、日没とほぼ同時の午後7時15分に産卵環境に着きました。すると、もう100m程手前から、繁殖期特有の雄の鳴き声「ピヨ、ピヨ、ピヨ」が渓流に響いています。これまでも散発的に、深夜に耳にしたことはありますが、これ程早い時間帯に連続しては、今シーズン初めてのことです。はやる気持ちを押さえて、足元のヒメハブに注意しながら、産卵場所の滝壷に近付きます。すると、滝壷の周辺にはざっと見回して、20〜30匹のハナサキガエルの雄が確認出来ます。そして、それを狙うヒメハブの姿も同時に。
 その場で2時間程様子をみましたが、今晩中に一気に集団産卵まで進むとは思えません。恐らくは、明日の晩か明後日の晩になるのではないでしょうか。今晩は一旦引き上げて、明日以降に万全の態勢で撮影出来るように備えることにしました。


滝壷にやって来たハナサキガエルの雄
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 Speedlight

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